江差線 失われた風景 2013.06.20-22
(2017年5月19日) ポップアップ対応で、左クリックにより大画像を示すようになりました。
江差線2014年5月12日、江差線の木古内-江差間42.1kmが廃止となった。いろいろと思うところのある廃止である。管理人は2013年6月に江差を訪問し、江差線に乗った。木古内駅が近づいて、目に飛び込んできたのは北海道新幹線のための異様に巨大な高架橋である。新幹線に並行する在来線は、開業時にJRの経営から分離することが政治的に了承された過程で、江差線の木古内-五稜郭間は経営分離することとなったが、その煽りを食う形で、その末端部があっさりと廃止されることになった。 これは北海道だけの事象ではなく、全国的に新幹線と並行する路線は各地で分離、あるいは廃止され、地方自治体の財政を圧迫したり、生活基盤が失われたりしている。その光景は、都市部への集中で、地方の衰退を象徴し、その行く末は、全体のゆるやかな衰退でしかないと思える。新幹線という強力なモルヒネによる一過性のカンフル効果に縋り付くしかない実情がある。 管理人には在来線への思い入れが強い。北海道新幹線は札幌まで延伸する計画を持っている。しかし、当該路線の9割はトンネルだ。いま、在来線を利用して北海道に来る人は、函館湾の沖に美しく湾曲する海岸線を眺め、その先の函館山を道しるべに北海道の玄関口である函館に近づくのを見るだろう。札幌に向かうならば、大沼に映る駒ヶ岳の優美な姿、そして有珠山をはじめとする火山群に囲まれた絶景を眺めながら内浦湾を半周し、海に突き出した絵鞆半島の工業地帯と白鳥大橋を目にするだろう。そして、樽前山、風不死岳、恵庭岳といった美しい山々を見て、札幌に入っていく。紀行作家の宮脇俊三氏はその過程を、町に近づくための「序曲」であると評した。序曲のないオペラは、どうも本腰を入れて聴く気がしない。序曲にはオペラで使われる様々な動機が提案される。町へ近づくときに目にする風景には、その町とは切っても切れない様々な因果関係や土地の成り立ちを示す。そこに日常との差を感じ、旅情が生まれる。しかし、新幹線にはその感覚がない。長い闇を通り、札幌の地下ホームにたどり着く。通勤に利用する地下鉄のような感覚は、ビジネス的でノルマ的なものでしかない。そんな新幹線が、次々と在来線を追いやっていく。 江差線の廃止部分は、「並行在来線」ですらなかったわけである。しかし、新幹線の開通の2年も前に、露と消えるように無くなってしまった。その路線は、旅情をたっぷりとはぐくんでくれる美しい車窓を持っていた。木古内から稲穂峠を越える急峻な山間を登る。夏場なら、新緑のカーテンをくぐり続けるような景色を堪能できる。分水嶺を越えると、山に囲まれた地に神明の趣深い駅舎がある。ここからは日本海に注ぐ「天の川」に沿って列車は走る。天の川は、小さな沢に端を発し、やがて古代の雰囲気を色濃く残すように大きく蛇行する川となる。上ノ国に至り、天の川が海へと消えていくと、今度は江差まで、広大な日本海を眺めて進んで行く。時間帯によっては夕陽に染まる金色の海を見晴らすことができた。 本ページでは、そんな江差線を惜しみつつ、管理人が2013年6月にかの地を訪問した様子を、写真でまとめてみた。江差線の魅力の一端でも伝えることができたなら幸いである。 |
2013年6月20日江差駅の朝 | 駅前にあった江差の町並み案内。江戸時代以来の歴史があり名所も多い。 | 江差駅の単線折り返しのホーム |
駅名標 | 駅は町の南端にある。北を望む。 | 江差駅の待合室。 |
江差駅に入線する普通列車。 | 江差8:09発の普通列車 | 運転席 |
中吊り広告。「知られざる江差線の旅」の字が見える | 江差駅を出発 | 出発すると、右手に江差の住宅街を見ながら、高台を走る。 |
函館駅 | せっかくなので、函館市電に乗って観光 | |
函館市電 | 相馬株式会社の社屋 | 公会堂から見る函館港と函館湾 |
路地 | 函館市電の風景。1970年代の函館市電の様子はこちらから。 |
13:15函館発木古内行普通列車で江差へ | 五稜郭駅 | すれ違う列車 |
再び函館山を見る。(茂辺地-渡島当別) | 北海道南岸の風景。(茂辺地-渡島当別) | |
北海道南岸の風景。(茂辺地-渡島当別) | 釜谷駅 | |
木古内14:18着 | 行き交うディーゼルカーたち。かつては松前線がこの駅から分岐していた。 | 駅名票 横には騒がしい看板がある |
木古内駅に停車する特急白鳥 |
国土地理院発行5万分の1地形図 1973年編集「江差」 江差駅付近 駅は町の南の外れにあった |
国土地理院発行5万分の1地形図 1976年編集「上ノ国」 上ノ国駅付近 上ノ国は集落形態としては分散。 役場は天の川を超えた反対側。 |
国土地理院発行5万分の1地形図 1976年編集「上ノ国」 中須田駅付近 |
国土地理院発行5万分の1地形図 1976年編集「上ノ国」 桂岡駅、宮越駅付近 |
国土地理院発行5万分の1地形図 1976年編集「上ノ国」 湯ノ岱駅付近 |
国土地理院発行5万分の1地形図 1973年編集「木古内」 神明駅付近 |
国土地理院発行5万分の1地形図 1973年編集「木古内」 吉堀駅付近 |
国土地理院発行5万分の1地形図 1973年編集「木古内」 渡島鶴岡駅付近 |
歴史ある港町、江差には古くからのお店も多い。 | 江差港。江戸時代の軍艦開陽丸。中を閲覧できる。 | 防波堤を伝って、鴎島へ徒歩で渡れる。 |
鷗島には、遊歩道が整備されていて、気持ちの良い散策路となっている。 | ||
鴎島から見る江差の街並み。 | 海の中を行く散策路。 |
上ノ国駅。人口5千人の上ノ国町の代表駅。商工会との共用の駅舎。 | 右はかつて使用されていた側線 | |
中須田駅 | 桂岡駅 | |
桂岡駅には草に覆われた引込線跡があった。 | 宮越駅 | |
天の川を渡る橋梁(宮越-湯ノ岱)。渓谷が美しい。 | 宮越-湯ノ岱間。写真奥が湯ノ岱。 | 湯ノ岱駅 |
湯ノ岱駅 | ||
湯ノ岱駅 | 神明駅。時間が止まったような静かな駅。 | |
吉堀駅 | ||
渡島鶴岡駅。駅前が公園になっている。 |
11.最後にもう一度江差線(木古内-江差)の線形をたどって(2013年6月22日)
江差線線路。吉堀-神明間 | ||
江差線線路。湯ノ岱-宮越間。 | 湯ノ岱-宮越間にあった駅を模したモニュメント。その名も「天の川駅」。北海道夢れいる倶楽部によって敷設された。列車は停車しないが駅名票を掲げていたこともあり、ファンにはちょっと知られた存在だった。 | |
立ち寄ったときは、駅名票はなかった。 | 第2天の川踏切 |
12.江差から北へ・・檜山海岸の景色(2013年6月22日)