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ヴァイス



音楽史

序曲 変ロ長調 組曲第17番へ短調 組曲第21番ト短調 組曲ニ短調
lute: ユングヘーネル

レビュー日:2015.3.2
★★★★★ バロック期に書かれたヴァイスの美しいリュート音楽
 シルヴィウス・レオポルト・ヴァイス(Sylvius Leopold Weiss 1687-1750)は、バッハ(Johann Sebastian Bach 1685-1750)と同時代を生きたドイツの作曲家。リュート奏者でもあった彼は、多くのリュートのための作品を遺しており、エザイアス・ロイスナー(Esaias Reusner 1636-1679)とともに、バロック期を代表するリュート作家と言える。
 しかし、今日では、リュート単独の作品が顧みられることは少なく、また演奏される場合もギターを用いてのことが多い。そんな中、当盤では、現代を代表するリュート奏者であるコンラート・ユングヘーネル(Konrad Junghanel 1953-)による、なんとも香しい美演が聴ける。収録されているのは、以下の楽曲。
1) 序曲 変ロ長調
2) 組曲 第17番 へ短調
3) 組曲 第21番 ト短調
4) 組曲 ニ短調
 1984年の録音。
 ユングヘーネルの名は、現在ではカントゥス・ケルンの創設者として知られているが、その本職は当盤で聴くようにリュート奏者である。様々な作品を熱心に研究すると言われているが、そんな彼らしさを知ることのできるアルバムだ。
 リュートの響きは、いかにも木の楽器が響かせる暖かな温もりに溢れている。演奏はとても真摯で、様式美の整った、どこか敬虔な雰囲気をまとった響きになっている。その一方で、リュート1台きりの演奏は、合奏とは違って自由度が高いこともあって、ユングヘーネルはいくぶん幅のある表現もこなす。スタイルとして程よい遊びがあることで、静寂の意味やメロディの息遣いが音楽的表現として昇華され、聴き手に心地よさを与えてくれる。
 ヴァイスの作品は、バッハを思わせる対位法に従った進行があり、その緊密性は崇高な空気をもたらすが、あわせてユングヘーネルの交えるルバート奏法からもたらされる揺れが、特有の歌謡性をもたらし、聴き手に複層的な喜びをもたらしてくれる。
 リュートという楽器の響きだけでなく、ヴァイスという作曲家の素晴らしさを、教えてくれるアルバムとなっている。


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