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ウォルトン



交響曲

交響曲 第1番 第2番 ヴァイオリン協奏曲 チェロ協奏曲 ヴィオラ協奏曲
アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 vn: チャン プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団 vc: コーエン va: ニューバウアー リットン指揮 ボーンマス交響楽団

レビュー日:2005.2.20
★★★★★ ウォルトン入門としても最適
 20世紀イギリスを代表する作曲家、ウォルトンの主要な作品が秀演で揃っているサービスのいい2枚組み。収録曲・演奏者は以下のとおり
CD1:
交響曲第1番 アシュケナージ指揮 ロイヤルフィル 録音1991年
ヴァイオリン協奏曲 vn: チャン プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団 録音1971年
CD2:
チェロ協奏曲 vc: コーエン リットン指揮 ボーンマス交響楽団 録音1993年
ヴィオラ協奏曲 va: ニューバウアー リットン指揮 ボーンマス交響楽団 録音1996年
交響曲第2番 アシュケナージ指揮 ロイヤルフィル 録音1991年
全般に、近現代の音楽的書法も垣間見ながら、テイストはロマン派であり、親しみやすい曲が多い。中でも交響曲の第1番は多くの演奏家に取り上げられる人気曲といってもいい。冒頭からシベリウス的ななだらかさであり、その後リズム感を増して力強い怒りにもにたパッションを叩きつける男性的な音楽だ。この40分を越える交響曲はウォルトンの作品の中でも最も一般ウケするに違いない。アシュケナージの燃えるタクトも快調だ。
最高傑作といわれる新ロマン主義の象徴作品、ヴィオラ協奏曲も収録。(この2枚目のCDはなんと81分超の収録時間)。ヴァイオリン協奏曲も力強い楽想が交錯する名品だ。
交響曲第2番は幻想的で霧の世界を思わせる。これもシベリウス、バックスなどの影響が感じられる。
演奏・録音ともに品質が高く、ウォルトン入門としても最適の2枚組みではないだろうか。


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声楽曲

組曲「コロンブス」(C.パルマー編) イーディス・シトウェルの詩による歌 恋する無名詩人の歌 領主市長の仕事机 12使徒
ヒコックス指揮 シティ・オヴ・ロンドン・シンフォニア ウェストミンスター・シンガーズ S:ゴメス MS: フィニー T: アーサー・デイヴィス、ヒル

レビュー日:2007.11.25
★★★★☆ 近代イギリスの作風の一端を示すものでしょう
 サー・ウィリアム・ウォルトン(Sir William Turner Walton 1902-1983)の管弦楽付声楽曲を収録。曲目は 1) 組曲「コロンブス」(C.パルマー編) 2) イーディス・シットウェルの詩による歌曲 3) 恋する無名詩人の歌 4) 領主市長の仕事机 5) 12使徒 の5曲。1)と5)の合唱を伴ったカンタータ風の作品。2)と4)はソプラノ独唱の歌曲。3)はテノール独唱の歌曲。演奏はヒコックス指揮のシティ・オヴ・ロンドン・シンフォニア、ウェストミンスター・シンガーズ。独唱はソプラノがジル・ゴメス、テノールがマルチン・ヒル。録音は1989年。
 映画音楽やラテン音楽にも適性を発揮した作曲家の作品なので、気難しい作風ではないですね。組曲「コロンブス」は映画音楽風のスペクタクルっぽいカンタータで、この時代にこのような気風を掲げたのはやはり現代音楽の中枢から地理的に離れたイギリスならではでしょう。2)は友人イーディス・シットウェルのナンセンス詩に基づくもので、1曲目はヴォーン・ウィリアムズ風、2曲目のファリャのようなエスニックなムードを経て、ちょっとミュージカルみたいな感じ。プーランクを思い出させるような箇所もあります。3)、4)もカントリー風の趣にラテンな味を加えている。最後に収められた12使徒もあっけらかんとした作品だが中間部の女声コーラスが効果を上げた神秘的な雰囲気が美しく印象に残る。

ウォルトン ヘンリーⅤ世~シェイクスピアのシナリオ(C.パルマー編)  ファーナビー ローサ・ソリス  カントルーブ オーヴェルニュの歌から「あちらのリムーザンで」 他
マリナー指揮 アカデミー・オヴ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 合唱団 ウェストミンスター大聖堂聖歌隊 語り: プラマー ob: ニックソン org: ワトソン

レビュー日:2009.11.27
★★★★☆ ウォルトンによる歴史的な映画音楽を聴く
 ウォルトンの映画音楽「ヘンリーV世」をクリストファー・パルマーが管弦楽組曲に編曲したものを収録。また余録として、ファーナビーのローサ・ソリス、カントルーブのオーヴェルニュの歌から「あちらのリムーザンで」他が収められている。演奏はマリナー指揮アカデミー・オヴ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズと同合唱団、及びウェストミンスター大聖堂聖歌隊。ナレーション: プラマー ob: ニックソン org: ワトソン。録音は1990年。
 ウィリアム・ウォルトン(William Turner Walton 1902-1983)はイギリスの作曲家で指揮者。その音楽はジャズ音楽のほか、ストラヴィンスキー、プロコフィエフの影響を強く受けていて、リズミカルな活力、輝かしいオーケストレーション。ロマンティックなメロディーを特徴としている。ウォルトンの音楽が積極的に評価されたのは映画音楽の世界である。この「ヘンリーV世」はシェークスピアの戯曲を基にした映画で、フランスとの戦争を描いたもの。映画が製作されたのは、第二次世界大戦の終わりごろで、その意図はイギリスの戦意高揚にある。ノルマンディー上陸との地理的なクロスオーバーがある。
 ウォルトンは戦中の「プロパガンダ音楽」作曲のため、兵役を解かれ、これらの音楽に取り組んだ。戦争というのは適材適所の判断を画一的にするものである。結果として生まれたのがここに聴く映画音楽だ。
 音楽は、弁士のナレーターが付いていることもあり、意気揚々たるもので、外面的な効果が高い。聴衆からも広く受け入れられたという。同時代の同国の作曲家として、ベンジャミン・ブリテンの存在を忘れてならないが、ブリテンは作曲家としてのステイタスを確立させて良心的兵役拒否の運動にも加わったが、ウォルトンのスタンスはだいぶ違ったようだ。どちらにしても、現代では「優れた作曲家」として一定の評価を得るに至っている。
 ウォルトンの音楽はなじみ易いだろう。アグレッシヴな勇壮さは、たしかに聴き手を惹きつける要素があり、映画音楽のレベルを高めたという歴史的価値も無視できない。マリナーの指揮はやや俗な部分の多いこれらの楽曲を、オブラートに包んだりせず率直に表現していると感じる。映画音楽という由来の「らしさ」がよく引き出されていると思う。


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