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ターネジ



現代音楽

もうひとつの“Set to” 沈黙の都市 4本のホルンのためのファンタンゴ 分断された線
スラットキン指揮 BBC交響楽団 tb: リンドベリ per: グレニー アースキン hrn: ブラウン マーレー アントクリフ ラーキン

レビュー日:2007.9.10
★★★★☆ 現代イギリスの「不安表現」音楽でしょうか
 マーク=アンソニー・ターネジ(Mark-Anthony Turnage 1960- )はサイモン・ラトルのプッシュもあって、現代イギリスを代表する作曲家としてすっかりその名も定着したようだ。本CDは地元イギリスのレーベルによるイギリスの録音。
 収録曲は以下の4曲。(1) もうひとつの“set to” (2) 沈黙の都市 (3) 4本角のファンタンゴ (4) 分断された線。演奏はレナード・スラットキン指揮のBBC交響楽団。録音は2002年。
 ティペットやナッセンの影響を受けた刺激的なオーケストラの音色を求めた作曲者の探訪の集積といった趣。どの曲も現代的な不安な音色を、絶え間なく、あるいは大きなクレッシェンド等により演奏効果を上げているが、モダンな旋律の断片的な用い方もこの作曲家の特徴だと思う。
 4曲の中でもっとも個性的なのが「もうひとつの“set to”」で、ブルーズっぽいブラスの響きがから導入され、多用なリズム変容が重ねられていく。「沈黙の都市」「4本角のファンタンゴ」は極めて性質の似た作品に聞こえる。現代的な不安要素のモチーフの断片的な重なりによって楽曲を構成する。「角」はホルンの意であり、ここではブラスセクションの活躍が面白い。「分断された線」はパーカッションの効果が衝撃的で、暗鬱さとパルスの交換・錯綜といったところ。気軽に聴く曲ではないが、精度の高い演奏がまずは見事だと思う。


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