セアンセン
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ラ・マッティーナ セレニダード トランペット協奏曲 p: アンスネス cl: フラスト tp: ヘルセット スカルスタード指揮 ノルウェー室内管弦楽団 セナゴー指揮 デンマーク国立交響楽団 レビュー日:2020.6.11 |
★★★★★ デンマークの現代音楽作曲家、セアンセンが書いた3つの協奏曲を収録
現代デンマークを代表する作曲家、ベント・セアンセン(Bent Sorensen 1958-)(ソアンセンとも表記)が、北欧を代表する3人の世界的器楽奏者のために書いた3つの協奏曲をまとめたアルバム。収録曲は以下の3曲。 1) ピアノとオーケストラのための「ラ・マッティーナ」 2) クラリネットとオーケストラのための「セレニダード」 3) トランペットとオーケストラのための「トランペット協奏曲」 3曲の各独奏者は、 ピアノ: レイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes 1970-) クラリネット: マルティン・フレスト(Martin Frost 1970-) トランペット: ティーネ・ティング・ヘルセット(Tine Thing Helseth 1987-) オーケストラは、1,3)がペール・クリスティアン・スカルスタード(Per Kristian Skalstad 1972-)指揮、ノルウェー室内管弦楽団、2)がトーマス・セナゴー(Thomas Sondergard 1969-)指揮、デンマーク国立交響楽団。2)は2014年のライヴ録音、他の2作品は2019年の録音。 現代音楽ならではの微分音を用いたソノリティを用いながら、時としてアコースティックな味わいを馴染ませる特有の作風。様々な情感や音楽的感情を、解体的に扱いながら、全体が新しい価値を形作る。現代芸術にふさわしい主張と、ノスタルジックな情感を併せ持つ音楽だ。 「ラ・マッティーナ」では、冒頭からピアノが不協和音と協和音の行き交うコラール風の旋律を奏でる。たいへん美しく、また不安定さを内包した音響だ。弦楽器陣が細やかな微分音を繰り出し、モザイク状に音画を作り出していく。中間部からピアノが細かいパッセージを重ねるが、その表現方法は攻撃的なものではなく、調和的な美観を目指すところに落ち着きを宿す。アンスネスのピアノも、いたずらに打楽器的に弾くのではなく、適度な丸みを帯びた奏で方で、この楽曲にふさわしい曲想を演出しており、流石だ。 「セレニダード」はフレストのクラリネットが合奏音との親和性の高い響きを感じさせ、そのことが全体的なシックさにつながる。中間部で男声によるハミングとの交錯が加えられるのが印象的だ。弦楽器陣が繰り広げる微分音の世界はセアンセンの一つのスタイルなのだろう。独奏楽器の音色の効果を踏まえた繊細な音像だ。 最後に収録された「トランペット協奏曲」は、デンマークの作曲家であるセアンセンが、地中海沿岸の雰囲気を思いながら書いたという、ヨーロッパではよくあるパターン。この楽曲では、ヘルセットの繰り出すトランペットの多彩な音色が妙技炸裂といったところ。南国風の明るさを、ユーモラスさと併せて表現した感があり、なかなか面白い。緩徐楽章の役割を担う第2楽章では、叙情的な旋律が滑らかに響く。 全3曲とも、独奏者の好演に支えられて、セアンセン作品の美しさを巧妙に伝えるものとなっている。馴染みやすい曲ではないが、繰り返し聴くことの面白味を味わわせてくれる。 |