シンディング
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交響曲 第1番 第2番 ラシライネン指揮 ノルウェー放送交響楽団 レビュー日:2005.6.25 |
★★★★★ 北欧が生んだ「ワーグナー交響曲」
クリスチャン・シンディング(Christian Sinding 1856~1941)はグリーグに次ぐ世代を代表するノルウェーの作曲家。若い頃からピアノを学び、1874年から79年にかけてライプツィヒ音楽院で管弦楽法、ヴァイオリン、音楽理論などを学んでいる。帰国後は作曲家として活躍し、1880年代には再度ベルリン、ドレスデン、ミュンヘンなどを訪問し楽法を研究する機会に恵まれた。その生涯に4曲の交響曲を作曲しており、ラシライネン指揮ノルウェー放送交響楽団のコンビは全集を録音している。 ここでは循環形式に基づく第1番とワーグナーの影響の大きい第2番が収録されている。これらの楽曲は、いわゆる北欧風とはやや趣を異にする感じもある。全体に重心が低く、形式がシリアスで、響きも同様なのだ。 しかし、それゆえの魅力も持っており、特に第2交響曲は、まるで「ワーグナーが作曲した交響曲」のような壮大なドラマが聴かれる。第2楽章の冒頭の音色はタンホイザーを思わせるし、それになにより巨大な構成でクライマックスを築き上げる第1楽章の見事さはなかなかのものだ。「隠れた名曲」といっていいだろう。ワーグナー張りの飛翔するような高揚感は、加速度的に音楽の輪郭をとぎすまし、なかなかカッコイイ。第1番は、むしろ私達が漠然と感じる「北欧的」な情緒を多く持っているだろう。特に美しい旋律が脈打つ第2楽章が魅力的だ。 |
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シンディング ピアノ協奏曲 アルネス ピアノ協奏曲 p: レーン リットン指揮 ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団 レビュー日:2007.4.1 |
★★★★☆ ドイツロマン派の影響を感じる北欧のピアノ協奏曲集
ハイペリオンによるロマン派の知られざるピアノ協奏曲シリーズ。42枚目となる今回は北欧の2人の作曲家の作品を収録。アイヴィン・アルネス(Eyvind Alnaes 1872-1932)とクリスチャン・シンディング(Christian Sinding 1856-1941)だ。ピアノはピアーズ・レーン、アンドルー・リットン指揮のベルゲンフィルによる演奏。 どちらもノルウェーの作曲家であるが、ドイツロマン派の影響を色濃く受けた作品だ。アルネスの作品はロシア情緒をも感じさせる内容で親しみやすいだろう。特に憂いを湛えた第2楽章はラフマニノフチックなメロディの扱いと、情感を膨らませるようなゆったりした展開がなかなか好ましい。第1楽章はオーケストラのスコアが入念に書かれていて、スケールの大きい音楽となっている。第3楽章冒頭のティンパニによる入りは、同郷の偉大なピアノ協奏曲であるグリーグ作品へのオマージュを感じさせるが、その後すぐに始まる軽やかな展開はまったく別の雰囲気で、ティンパニは気分で入れてみただけなのか?でもちょっと北国の春を思わせるような。 シンディングの場合、特に初期から中期にかけての作品は、ワーグナーを主とするドイツロマン派の影響が如実に感じられ、北欧音楽フアンには「ちょっと違うなぁ」という感想を持たれるものだと思う。音楽もなかなかに熱っぽく、この作曲家特有の上昇・下降感は、たとえばこの作曲家の交響曲第2番なんかに通じる気がする。第2楽章の中間部はイタリアオペラのカラオケみたいな感じで面白い(面白がる論点がずれてるかもしれないが)。第3楽章の終結部はいよいよ盛り上がり壮大なティンパニのリズムに刻まれて幕を閉じます。若きシンディングの情熱が伝わってくる作品ですね。 |