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シュールホフ



協奏曲

ピアノ協奏曲「アラ・ジャズ」 フルートとピアノのための二重協奏曲 弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲 5つのジャズ・エチュード* ジャズのスケッチ「わが友・ジム・クラークに捧ぐ」* ラグ-ピアノのための音楽「アーサー・ブリスに捧ぐ」*
p: マザール fl: ヴィルト ホーソーン弦楽四重奏団 デルフス指揮 ドイツ室内フィル *p: シュールホフ

レビュー日:2006.2.26
★★★★★ エルヴィン・シュールホフの紹介盤に持って来いです。
 デッカの頽廃音楽(Entartete Musik)シリーズの1枚。エルヴィン・シュールホフ(Ervin Schulhoff 1894-1942)はプラハ生まれの作曲家でピアニスト。ナチスに対抗する共産主義活動にも積極的だった彼は、第2次世界大戦が終結する前の1942年に、強制収容所で亡くなっている。
 こ辣腕のピアニストであったようだが、彼の芸術動機には第1次世界大戦時から巻き起こった「ダダイズム」に拠を置く。つまりは既成の価値観の破壊と新しい価値観の創造を主眼とし、反芸術のスタンスを芸術の一ジャンルまで押し上げるものだった。彼の活動は「辛口の批評家」とし端を発し、凄腕のピアニストであり、気鋭の作曲家であったわけだ。
 こでは最新の録音にあわせて、ピアニスト・シュールホフによる自作自演の貴重な1928年当時の録音が収められている。シュールホフは当時盛んになったラジオ放送に強い興味を示し、これを芸術を伝える新しい媒体として強く意識した。そんなわけで貴重な録音が残っていたのだが、1920年代の録音であるが、かなりよく雰囲気を伝えており、貴重この上ない。その録音から垣間見得る彼のスタイルは、反芸術というより、素直なモード・ジャズに聞こえるが。
 さて、このアルバムにはもちろん1994年に録音された彼の主要な作品が収録されている。聴いてみると、決して難解ではなく、むしろ楽しい作品である。体感型の音楽であり、クラクションやサイレンなどを用いて街の音からのインスピレーションをバックに用いたりしながらも、オーケストレーションも巧みで音楽としての高い完成度を誇っている。
 1923年の作品であるピアノ協奏曲「アラ・ジャズ」は外向きの作品で、打楽器群との呼応も楽しい。一方で1930年の作品である弦楽四重奏と管楽オーケストラのための協奏曲では、より精緻な書法により、内省的で深刻な音楽となっている。特にラルゴの深く沈んで行く楽想はショスタコーヴィチを思わせる。演奏のレベルも高く、シュールホフという人物を知るのにたいへんふさわしいアルバムとなっている。


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