シャルヴェンカ
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シャルヴェンカ ピアノ協奏曲 第4番 ザウアー ピアノ協奏曲 第1番 p: ハフ フォスター指揮 バーミンガム市交響楽団 レビュー日:2004.1.1 |
★★★★☆ ロマン派の真髄といえる知られざる名曲
ロマン派ピアノ・コンチェルトの隠れた名作を発掘するハイペリオン・シリーズの11枚目。 収録曲はシャルヴェンカのピアノ協奏曲第4番と、ザウアーのピアノ協奏曲。 1850年ポーランド生まれの作曲家フランツ・クサヴァー・シャルヴェンカの第4協奏曲は知る人ぞ知る秘められた名曲だ。美しいメロディに満ち、充実した響きに彩られる。 一方エミール・フォン・ザウアーは1862年ハンブルクで生まれたピアニスト。ニコライ・ルビンシテインとリストに師事している。リスト直系のピアニストとして大成功している。 ピアノ独奏のハフの技巧は安定感抜群!オケともども立派な響きでこれらの曲の待望の、そして決定的な録音として十分な価値ある内容。ロマン派ピアノフアンにオススメ! |
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ピアノ・ソナタ 第2番 ロマンス ソナチネ 2つのポーランド舞曲 p: タニエル レビュー日:2017.2.15 |
★★★★☆ シャルヴェンカのあまり知られていないピアノ独奏曲を紹介してくれる良盤
トルコのイスタンブール出身のピアニスト、セタ・タニエル(Seta Tanyel 1947-)は、確かな実力と音楽性を持ち合わせた人で、そのディスコグラフィでは、プーランク(Francis Poulenc 1899-1963)のピアノ独奏作品の全集も目立つが、主にロマン派以降のややマイナーな作曲家のピアノ作品をレコーディングのレパートリーに据えているようだ。例えば、モシュコフスキ(Moritz Moszkowski 1854-1925)やマクダウェル(Edward MacDowell 1861-1908)などがそのターゲットである。 また、ポーランドの作曲家、シャルヴェンカ(Xaver Scharwenka 1850-1924)についても、その主要な作品を一通り録音していて、当盤は1992年に録音されたシャルヴェンカ・チクルスの第2弾ということになる。収録曲は以下の通り。 1) ロマンス op.33 2) ソナチネ ホ短調 op.52-1 3) 2つのポーランド舞曲 op.29 4) ピアノ・ソナタ 第2番 変ホ長調 op.36 シャルヴェンカの作品はクラシックの真に偉大なものの系列に属するとは言い難い。その理由はやはり旋律に無二のものという偉大さが乏しく、名曲のラインナップに登りきれないためである。しかし、優れた作曲技術を持った人で、抒情的な柔和さや、情熱的な流れを音楽に自然に組み込むことが出来た。そこで、これらの作品を聴いてみると、その印象は個性的ではないが、穏健な手堅さや堅実さを感じるものとなる。 冒頭の「ロマンス」は、4つの楽章からなる大曲で、シューマン(Robert Schumann 1810-1856)の幻想曲を彷彿とする人も多いだろう。第1楽章の第2主題のもつ雰囲気、左右の両手で紡がれる旋律と伴奏の邂逅がそれを印象付けるし、瞑想的な緩徐楽章の味わいも近いものが感じられる。だが、ポロネーズを引用した終楽章では、全曲は力強い完結に向けて、進んでいく。 ソナチネは古典の大家たちのフレーズを思わせる要素が通っていて、ある意味懐古的な面白さがある。2つのポーランド舞曲は、いわゆるマズルカ様式に近く、情緒的なメロディが紡がれるとともに、独特の活気も見せる。 ピアノ・ソナタ第2番は、劇的な要素を持った力作で、4つの性格的な楽章からなる。すなわち不安な要素が支配的な第1楽章、情熱的な飛翔感のある第2楽章、穏やかな第3楽章、フィナーレを形成する第4楽章である。古典性とロマン性の入り混じった熱があり、旋律のもつ訴えかける力も強い。当アルバムの収録曲では、冒頭のロマンスと最後のソナタに、この作曲家の真価が発揮されていると感じられる。 タニエルのピアノは、暖かい響きをベースに、自然な流れの良さをキープし、演奏の難易にかかわらず、プロポーションのしっかりした聴き易さがある。これらの楽曲を知るのに、絶好の録音と言えるだろう。 |