トップへ戻る

サイグン



交響曲

交響曲 第3番 第5番
ラシライネン指揮 ラインラント=プファルツ州立フィルハーモニー管弦楽団

レビュー日:2007.11.3
★★★★☆ あまり聴く機会のないトルコの作曲家の交響曲です
 トルコの作曲家、アフメト・アドナン・サイグン(Ahmet Adnan Saygun 1907 - 1991 )の2曲の交響曲を収録。演奏はラシライネン指揮のラインラント=プファルツ州立フィル。録音は2002年。ラインラント=プファルツ州はドイツの南西部に位置し、フランス、ルクセンブルク、ベルギーと接している。
 トルコの作曲家と言われても、なかなか思いつかないが、ベートーヴェンやモーツァルトが「トルコ行進曲」あるいは「トルコ風」といった作品を書いていることからわかるように、トルコはもともと音楽活動の盛んな土地と言える。西アジアでももっとも整理された旋法と複雑なリズム体系を持ち、19世紀以降はヨーロッパの影響も大きくなる。また一般に言われる「アラビア音楽」も多くはトルコで生まれている。
 サイグンはトルコ5人組と呼ばれる集団の一人で、ヨーロッパで確かな教養を身につけた人物。トルコで教育活動を行ったやヒンデミットや、ともに民俗音楽の研究を行ったバルトークの影響もある。
 交響曲は5曲書いていて、第3番は1961年、第5番は1984年の作品。いずれもメロディとトーンが交錯する間断ない変化を持った作品で、強く残るメロディラインはないが、経過句やリズムに特徴が濃く、聴いていて面白みがある。特に第3番は様々な要素があり、第2楽章はバルトークを思わせるオーケストラ書法があり、第3楽章はストラヴィンスキー的な土俗感がある。激しいリズムの変容を伴う終楽章があるいはもっともトルコ的かもしれない。第5番はそれに比べると、枯淡な趣がある。トルコ音楽を素材としてはいるが、あきらかに東ヨーロッパ風な作品に仕上がっていると感じられるのも特徴だろう。


このページの先頭へ