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サクル



器楽曲

春のソナチネ 夏のソナチネ 秋のソナチネ 冬のソナチネ 最後の子供の歌 13の即興曲
p: エイディ

レビュー日:2025.8.12
★★★★☆ 現代フランスの作曲家、サクルのピアノ曲集
 レバノン生まれのフランスのピアニスト、ビリー・エイディ(Billy Eidi 1955-)による、フランスの作曲家、ギイ・サクル (Guy Sacre 1948-)のピアノ独奏曲集。収録曲の詳細は下記の通り。
 最後の子供の歌(Dernieres Chansons enfantines)
1) Allegre 2:13
2) Modere 1:49
3) Lentement 2:24
4) Joyeux et bruyant 2:12
5) Lentement, gravement 2:13
6) Enjoue 2:25
7) Doucement, simplement 1:45
8) Vif et Joyeux 1:45
 冬のソナチネ(Sonatine d'hiver)
9) Moderement anima 4:11
10) Modere 2:16
11) A la gigue 2:42
 春のソナチネ(Sonatine de printemps)
12) Madero 2:36
13) Tranquille et heureux 2:01
14) Allegre 2:01
 夏のソナチネ(Sonatine d'ete)
15) Moderement anima 3:15
16) Lent 3:34
17) Allegrement 3;16
 秋のソナチネ(Sonatine d'automne)
18) Agite 2:10
19) Lent, sans rigueur 2:52
20) Vivement (Valse oublieuse) 3:50
 13の即興曲(Treize Impromptus)
21) Vite 1:39
22) Calme et pensif 1:41
23) Rapide 0:45
24) Sans hate 9:05
25) Modere 1:08
26) Anima 1:14
27) Lentement 1:38
28) Vif et lager 1:35
29) Paisible 1:59
30) Agile, mais chantant 0:52
31) Plutot lent 1:40
32) Allegro 1:23
33) Sans hate 2:16
 2021年の録音。
 ピアニスト、音楽評論家としても活躍しているというギイ・サクルであるが、私がこの作曲家の作品を聴いたのは当盤が初めて。当盤を聴いて感じるその作風は、調和的で即興的という印象だ。現代音楽というより、印象派に近く、耳に厳しい音ではない。静謐であったり、おどけた調子であったりするが、全般に渋みがあって、良く知られた作曲家の中で誰に近いか?と問われれば、ピアノ独奏曲というジャンル上の比較では、フォーレ(Gabriel Faure 1845-1924)に近い気がする。
 冒頭の「最後の子供のための歌」は、子どものための作品ではなく、子ども時代を回顧するものだという。冒頭曲のフレーズから、記憶を遡っていくイメージとも言えるが、カラーは悲し気であり、かつ幻想的である。それに続く小曲たちは、いずれも即興的で、大きく発展することのない儚さを宿している。独特の繊細さの中で淡い情緒を描いている。
 続いて、冬、春、夏、秋の四季を関したソナチネが収録されている。いずれも3つの部分からなるが、冬のソナチネのModereが美しい情感を湛えた神秘的な曲で、このアルバムからどれか一つとるということであれば、この曲になるという人は多いと思う。これらのソナチネでは、はしゃぐような楽想によるものと、瞑想的な楽想によるものが、対比的に登場するような印象。旋律はいずれも散文的であるが、色感の面白味が重要であり、ピアニストの感性が直接的に反映する感じである。
 13の即興曲は、素朴なフレーズを用いながら、内省的なものを示唆する傾向に富む。やはり、フレーズそれ自体の魅力よりも、響きの世界の中で作られる雰囲気が支配的である。時に鐘の音のような響きも交錯する。個人的には、Agile, mais chantantやSans hateに、この作曲者の個性が明瞭に分かりやすい形で出ているように思う。
 作曲家と親交が深いというエイディの演奏は、常に落ち着いた足取りで、残響がもたらす余韻を用いながら、これらの楽曲に薫りを与えている。楽曲自体の魅力という点では、やや単調な感じも否めないところはあるが、これらの楽曲の演奏という点で、一つの理想に近いものに感じられる。


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