ルーセル
![]() |
交響曲 第3番 第4番 バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」 組曲 第2番 弦楽のためのシンフォニエッタ ヤルヴィ指揮 デトロイト交響楽団 レビュー日:2020.1.21 |
★★★★★ 守備範囲の広いヤルヴィならではの選曲。ルーセルの管弦楽作品の魅力がよく伝わります。
ネーメ・ヤルヴィ(Neeme Jarvi 1937-)指揮、デトロイト交響楽団の演奏で、アルベール・ルーセル(Albert Roussel 1869-1937)の以下の楽曲を収録したアルバム。 1) 交響曲 第3番 ト短調 op.42 2) バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」 組曲 第2番 op.43 3) シンフォニエッタ op.52 4) 交響曲 第4番 イ長調 op.53 1.2)は1991年、3.4)は1992年の録音。 ルーセルは印象派に分類されることの多い作曲家であるが、その作風は古典性を踏まえた熱血的なものがある。また、フランク(Cesar Franck 1822-1890)などの影響もあって、その作品は折衷的な様相を持っている。 私が、ルーセルの「交響曲 第3番」という楽曲の存在を知ったのは、少年時代に愛読していた諸井誠(1930-2013)の名著「交響曲名曲名盤100」によってである。1979年に刊行されたその書物では、著者が、古今の交響曲群から名曲100曲をリストアップし、その各曲への独自のコメンタリーとともに名盤を紹介してくれるもので、その軽妙な語り口は、私を音楽世界へ誘ってくれたのである。その書物を今みて、感慨深いのは、選ばれた100曲の顔ぶれである。ブルックナー(Anton Bruckner 1824-1896)が第0番も含めて10曲とも選ばれているのは、著者の先見の明と言いたところだが、その一方で現在ではだれもが認める名作、ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov 1873-1943)の第2交響曲が選外となっているなど、いまの感覚でみると逆に新鮮だ。され、そこにルーセルの第3交響曲もラインナップされていたのである。 ルーセルの第3交響曲について、現代では、名曲にカウントされることはあまりないと思う。しかし、古くからバーンスタインやミュンシュといった巨匠が録音を行い、国内でもLPが流通していたため、案外広く知られた楽曲だったのだろう。 現在、当該曲の録音数は多いとは言えず、広く聴かれているとも言えないだろう。だが、ルーセルの第3交響曲は馴染みやすい作品だ。名曲にカウントされにくい、と書いてしまったのだが、聴きもらすのはもったいないだろう。古典的な4楽章構成で、明るく華やか。バーンスタインやミュンシュもその点に共鳴し、縦線のくっきりした熱演を記録したわけだ。当ヤルヴィ盤はバーンスタインやミュンシュの鋭角的な演奏を、やや和らげながら、全般に正統的な強度の高い堅実な演奏を繰り広げている。デトロイト交響楽団のアンサンブルの機能性の高さもあって、なかなかに愉悦性のある演奏となっている。華やかな金管とティンパニのからみ、瀟洒な響きと豊かな色彩感で、この曲の「らしさ」を存分に味わえる。 「バッカスとアリアーヌ」は「蜘蛛の饗宴」とともに、ルーセルの作品の中では良く知られ、親しまれている作品だろう。独奏ヴァイオリンの妙、そしてバッカナールの熱血的な盛り上がりが聴きどころで、ゴージャスな音楽に仕上がっている。進むにつれて迫力が増すこの第2組曲において、ヤルヴィの演奏は、脈々とエネルギーを注入し、心地よくアクセルを踏み続けたもので、実に楽しく爽快に仕上がっている。 「シンフォニエッタ」は、ルーセルの交響曲や「バッカスとアリアーヌ」を聴いたことのある人にとっても、当盤ではじめて聴くパターンとなる可能性が高い曲だろう。弦楽のために書かれた作品であるが、ルーセルらしい運動的な魅力がある。 交響曲第4番は充実した響きで演奏されている。フレキシブルで、スパイスの利いた響きが魅力だが、ヤルヴィの演奏は流石にツボを外さない。オーケストラともども、重量感にも運動性にも不足のない堂々たる様を示している。 |