ルベル
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表題付きトリオ・ソナタ全集 「フローレ」 「ジュノン」 「ヴィーナス」 「リュリ氏へのトンボー」 「パラス」 「不死」 「アポロン」 アンサンブル・ルベル レビュー日:2013.7.12 |
★★★★☆ フランス・バロックのトリオ・ソナタの姿を示す曲目と演奏
フランス・バロック期を代表する作曲家(兼ヴァイオリニスト兼指揮者)の一人、ジャン=フェリ・ルベル(Jean-Fery Rebel 1666-1747)の表題付きトリオ・ソナタを集めたアルバム。収録曲は以下の通り。 1) トリオ・ソナタ イ長調「フローレ」 2) トリオ・ソナタ ホ短調「ジュノン」 3) トリオ・ソナタ ヘ長調「ヴィーナス」 4) トリオ・ソナタ ハ短調「リュリ氏へのトンボー」 5) トリオ・ソナタ ニ長調「パラス」 6) トリオ・ソナタ ト短調「不死」 7) トリオ・ソナタ 変ロ長調「アポロン」 アンサンブル・ルベル(Ensemble Rebel)による1996年の録音。トリオ・ソナタの編成は、当時の代表的なスタイルの一つで、バロック・ヴァイオリン2つに、ヴィオラ・アダ・ガンバとハープシコードの通奏低音が加わり、計4つの楽器からなる。 アンサンブル・ルベルは、2001年の同時多発テロの際の追悼演奏会でも注目された古楽合奏団で、当盤では、ヨルグ=マイケル・シュワルツ(Jorg-Michael Schwarz 1963-)とカレン・マリー・マーマー(Karen Marie Marmer)のバロック・ヴァイオリン、ゲイル・アン・シュローダー(Gail Ann Schroeder)のヴィオラ・ダ・ガンバ、そして音楽学者としても高名なピーター・ダークセン(Pieter Dirksen)がハープシコードで参加している。 ルベルという作曲家は、現代ではバレエ音楽「四大元素(Les Elements)」のただ1曲で知られる存在といったところ。この曲が有名なのは、冒頭が不協和音の合奏により始められるためで、当時において、きわめて斬新な感覚であったと考えられている。 ここに収録されているのは、いずれも当時の一つの典型とも言える「トリオ・ソナタ」であるが、いかにもこの時代らしい風雅な趣を示している。一方で、開放弦の使用が多いことで音色的な特徴も持っている。また、楽曲的には、他の同時代の作曲家の作品と比較した場合、構造に対する制約にゆるさがあるため、当時にあっては、自由な雰囲気のあるものになっている。 中で、比較的有名なのは、最も規模の大きいハ短調「リュリ氏へのトンボー」で、これはルイ14世の宮廷楽長であり、ルベルの師であったジャン=バティスト・リュリ(Jean-Baptiste Lully 1632-1687)への追悼音楽で、リュリの作品の旋律を引用しながら、ハ短調という深刻な調性によって描かれている。ちなみに、トンボー(tombeau)は、フランス語で墓の意味で、音楽用語として用いた場合、「追悼曲」ということになる。 全般に瀟洒な雰囲気を湛えながらも、ちょっと散漫なところを持っていて、それがルベルの作風であろう、と察せられるが、この作曲家を団体名に冠したルベル・アンサンブルの演奏は、さすがに含蓄を感じさせるもので、豊かな滋味を併せ持っている。 |