パルムグレン
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ピアノ協奏曲 第1番 第2番「河」 第3番「メタモルフォーゼン」 ヴァイオリンとピアノのための7つの小品 p: シーグフリードソン ゼデルブロム指揮 ポリ・シンフォニエッタ vn: ゼデルブロム レビュー日:2019.10.29 |
★★★★★ パルムグレンの魅力的な作風を紹介してくれるアルバム
フィンランドのピアニスト兼作曲家、セリム・パルムグレン(Selim Palmgren 1878-1951)は、生涯に数多くのピアノ曲を書き、また、旋律的な題材を北欧の民謡等に求めることも多かった。そんな作風を踏まえて、「北欧のショパン」と呼ばれることもある。本盤は、パルムグレンが書いた5つのピアノ協奏曲のうち第1番から第3番までの3曲と、後年のヴァイオリンとピアノのための作品が収録されている。収録内容は以下の通り。 1) ピアノ協奏曲 第2番 「河」 op.33 2) ピアノ協奏曲 第1番 ト短調 op.13 3) ピアノ協奏曲 第3番 「メタモルフォーゼ」 op.41a ヴァイオリンとピアノのための7つの小品 op.78 4) 前奏曲(Prelude) 5) ユモレスク(Humoresque) 6) カンツォネッタ(Canzonetta) 7) フィドル弾き(The Fiddler) 8) フィンランド・ロマンス(Finnish Romance) 9) 東洋風セレナード(Oriental Serenade) 10) プレギエラ(Preghiera) ピアノ独奏はヘンリ・シーグフリードソン(Henri Sigfridsson 1974-)。協奏曲はヤン・ゼデルブロム(Jan Soderblom 1970-)指揮、ポリ・シンフォニエッタとの協演。ゼデルブロムは4-10)ではヴァイオリン独奏を担当。2014年の録音。 ヴェゲリウス(Martin Wegelius 1846-1906)、ブゾーニ(Ferruccio Busoni 1866-1924)を師とするパルムグレンのピアノ音楽は、技巧的であるとともに叙情的である。ピアノ協奏曲第2番「河」は、彼の作品のうちでも特に旋律的な魅力に富んでいる。この「河」は、パルムグレンが生まれ育ったボスニア湾に面したポリ(Pori)市を流れる、コケマエン(Kokemaenjoki)川のことだそうだ。今の時代は便利なもので、ネット上でこの川の様子を様々に見ることが出来るが、ボリ市の自然豊かな美しい風景によくなじんだ街並みの中を流れる川の風景は実に美しい。その景色は、私の住む北海道にも通じるところが多く、それゆえに親近感もわく。 収録されている3つのピアノ協奏曲は、いずれも単一楽章構成を持つが、第1番と第2番は緩急の差のある3ないし4の部分からから構成されている。第3番は変奏曲形式。特に第2番には、ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov 1873-1943)、グリーグ(Edvard Grieg 1843-1907)、シベリウス(Jean Sibelius 1865-1957)といった人たちの影響が感じられ、情緒表現に秀でたものがある。中間部の流れゆくようなピアニスティックな味わい、木管が添える情景的なメロディも忘れがたい。チェレスタの効果的な使用も楽曲を聴く楽しみを増している。 第1番はより熱血的なものがあり、前進性のある音楽であり、こちらもラフマニノフ的なものを感じさせる。この協奏曲が書かれたのが1904年ということで、すでにラフマニノフのピアノ協奏曲でもっとも高名な第2番が世に出た後である。第3番はより音響的に複雑さを増した書法が用いられるが、十分な分かりやすさがあって、聴き易い。 ヴァイオリンとピアノのための小品集も、簡素ながら情緒豊かな音楽たちで、こちらもしばしば北欧の民謡から採取された旋律が用いられているという。内省的な前奏曲からはじまり、情緒的なフモレスク、カンツォネッタと続く。ちょっと捻りのある東洋風セレナードをへて安寧を感じさせるプレギエラで美しくアルバムが閉じられる。 パルムグレンという作曲家への入門にも適した一枚。彼の書いたピアノ協奏曲は、私には、サン=サーンス(Camille Saint-Saens 1835-1921)のピアノ協奏曲と同じくらい、楽しめる。 |