トップへ戻る

ミャスコフスキー



交響曲

交響曲全集 シンフォニエッタ イ長調op.10 イ長調op.32-2 イ短調op.68-2 沈黙 セレナード第1番 コンチェルティーノ・リリコ リンクス ディヴェルティスマン アラスター 祝典序曲 スラヴ狂詩曲 悲愴序曲
スヴェトラーノフ指揮 ロシア国立交響楽団 ソ連国立交響楽団(第3番・第22番) ソ連国境警備隊楽団(第19番) ロシア国立アカデミー合唱団

レビュー日:2010.12.17
★★★★★ 圧巻の量を誇るミャスコフスキー。敬意を持って聴きましょう!
 ソ連の交響曲の父とも言われるニコライ・ミャスコフスキーは1881年ノヴォシビルスク生まれ。チャイコフスキー、ショパンの影響を受けた郷愁溢れる旋律に、シベリウス、ショスターコヴィチ的な内省的側面を併せ持った作風。当盤はそんなミャスコフスキーが書いたなんと27曲の交響曲の全集である。
 もちろん、2010年現在入手可能な唯一の全集であり、今後も唯一であり続ける可能性が高いが、一応、当盤の収録内容を書いておきたい。まず交響曲全27曲(タイトルのあるものとして第6番「革命」、第10番「青銅の騎士」、第12番「十月革命15周年に捧ぐ」、第18番「10月革命20周年に捧ぐ」、第22番「交響的幻想」、第26番「ロシアの主題による」がある)、それに加えて3曲のシンフォニエッタ(イ長調作品10、イ長調作品32-2、イ短調作品68-2)、さらに「沈黙」「セレナード第1番」「コンチェルティーノ・リリコ」「リンクス」「ディヴェルティスマン」「アラスター」「祝典序曲」「スラヴ狂詩曲」「悲愴序曲」とまさにこの作曲家を俯瞰するかのようなCD16枚圧巻の収録内容である。演奏はスヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団であるが、交響曲第3番と第22番はオーケストラがソ連国立交響楽団であり、また赤軍創立21周年を記念して作られた交響曲第19番は吹奏楽のための作品で、ソ連国境警備隊楽団による演奏。また合唱を伴う第6番ではロシア国立アカデミー合唱団が務める。録音は第3番と第22番が1965年、第19番が1971年である以外は1991年から93年にかけてで、まさにスヴェトラーノフ渾身の一大プロジェクトと言える。
 数が多いだけでなく、1曲1曲の規模も大きく、ほとんどのCDが長時間収録を要していて、芸術家の熱い気持ちが伝わる。楽曲は、ほの暗い暖かさの中に郷愁を宿したものが多く、浪漫的で散漫な部分が多い一方で、美しく魅力的な部分もあり、なかなか捨てがたい。有名な作品としては交響曲第27番、第21番の2曲で、これらは比較的演奏機会もあり、情緒が素直に表現されていて旋律も魅力的だ。また第17番、第20番などもいわゆるロシア的なチャイコフスキー・ラフマニノフ路線とでも言える郷愁の香りを感じさせてくれる。第19番も吹奏楽を楽しめる人にはぜひ聴いてもらいたい作品だ。個人的にこれらと別に気に入っているのが第15番。ニ長調という古典的な調性でなんともふくよかな幸福感をかもし出していて、異質ながら魅力的な作品だと思う。
 それにしても、スヴェトラーノフはこのプロジェクトの完遂のため、自費も投じたとされる。「伝えること」の使命を果たした芸術家の所産には、あらためて敬意を表した上で接したいものである。

交響曲 第27番 チェロ協奏曲
ポリャンスキー指揮 ロシア国立管弦楽団 vc: イワシキン

レビュー日:2005.5.1
★★★★★ 北国の夕暮れの郷愁を堪能
 ソ連の交響曲の父とも言われるニコライ・ミャスコフスキーは1881年ノヴォシビルスク生まれ。チャイコフスキー、ショパンの影響を受けた郷愁溢れる作風に、シベリウス、ショスターコヴィチ的な内省的側面を併せ持った魅力的な作風だ。生涯になんと27曲の交響曲を作曲しているが、なかでも最高傑作といえる最後の第27番がポリャンスキーの指揮で録音された。
 力強い情熱を秘めた構成力はなかなかで、木管、金管の憂いある響きがなんとも魅力的だ。ホルンと低弦によって描かれるほの暗い夕暮れの空を交錯するような、木管とヴァイオリンの牧歌的な調べは胸を熱くする。ポリャンスキーの指揮ぶりも、オーケストラのバランスに細心の気を配った行き届いたもの。
 もう一曲はチェロ協奏曲。これまたいい曲だ。たゆたうようなオーケストラに先導され、2分たってからゆったり、たっぷりと低く歌い出されるイワシキンのチェロのソロはメロディの美しさ、秘められた悲しみでぐっとくる。まさに北国のチェロ協奏曲といった趣きで、しられざる名チェロ協奏曲といっていいかもしれない。ミャスコフスキーという作曲家を知るのにもうってつけの録音だ。


このページの先頭へ