ルブラン
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ルブラン オーボエ協奏曲 第3番 第5番 第6番 ベートーヴェン オーボエ協奏曲(未完)からラルゴ bfl: シュニーマン デ・フリーント指揮 ラジオ・チェンバー・オーケストラ レビュー日:2020.6.12 |
★★★★★ オーボエの典雅な響きに接する喜びを味わえる1枚
マンハイム宮廷楽団でオーボエ奏者を務めたルートヴィヒ・アウグスト・ルブラン(Ludwig August Lebrun 1752-1790)は、オーボエのための作品をいくつか書いたが、現在では6曲遺されたオーボエ協奏曲が、同ジャンルのレパートリーとして、しばしば取り上げられる。 当盤は、オランダのオーボエ奏者、バルト・シュニーマン(Bart Schneemann 1954-)と、ヤン・ヴィレム・デ・フリーント (Jan Willem de Vriend 1962-)指揮、オランダの合奏団であるラジオ・チェンバー・オーケストラによる全曲録音の第2巻に当たるもので、以下の楽曲が収録されている。 1) ルブラン オーボエ協奏曲 第3番 ハ長調 2) ルブラン オーボエ協奏曲 第6番 ヘ長調 3) ルブラン オーボエ協奏曲 第5番 ハ長調 4) ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827) オーボエ協奏曲へ長調 より 「ラルゴ」 2004年の録音。 収録曲について、さらに書くと、末尾に収録されたベートーヴェンの「オーボエ協奏曲」は、ベートーヴェンが若いころに手掛けて、完成することはなかった(あるいは完成稿が散逸してしまった)作品である。当録音は、スケッチの遺されたラルゴ部分に、補筆され、演奏可能な状態に復元されたスコアによるもの。 私には、個人的にルブランのオーボエ協奏曲に関する想い出が少しある。音楽を聴き始めたころ、FMのエアチェックにより、未知の曲を開拓することを楽しんでいたのだが、父親に勧められて録音した作品の中に、ルブランのオーボエ協奏曲があった。第何番だったかは忘れてしまった。若い私は、それを聴いたとき、いささかパンチの足りない曲として、それほど何回も聴くことはなかったのである。しかし、年を取ったせいなのか、最近では、様々な曲の良さを自分なりに感じ取れるようになり、今はこのルブランの曲集を聴いて「いいな」と思うようになった。 当録音は演奏もとても良いと思う。演奏に用いられているバロック・オーボエが、操作性においてある程度安定している点も良い。シュニーマンのオーボエは細やかなフレージングを機敏にこなし、なおかつ順応性の高い音色で、曲想の演出が巧みだ。広い音域で存分にコントロールが効いているのも好ましいし、音量、音色の両面で豊かである。室内合奏団は、現代楽器ならではの軽重の幅のある音を繰り広げていて、細やかな芸に感じ入らせてくれる。特に現代楽器の高音の安定感からもたらされる全体の落ち着きは見事で、テンポに音楽表現としての自発性が息づいており、ピリオド楽器でもっぱらにおきる楽器性能の制約からもたらされる他律的な束縛感が少ない。そのことが表現性に幅をもたらしている点は特に素晴らしい。 第6番の終楽章のホルンとの掛け合いをはじめ、管弦楽と独奏楽器の時に対比感を出し、ときに融合を目指しという間合いの良さ、そして旋律自体の品の良さとあいまって、絶妙の聴き味をもたらせてくれる内容となっている。 なお、最後に収録されているベートーヴェンの復元稿は、あくまで参考といったところだろう。この曲が完成していれば、と聴き手に思わせるところまでの魅力は正直感じないが、ベートーヴェン初期の考案の一つとして、知ることが出来る。 |