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ヤーダスゾーン



協奏曲

ヤーダスゾーン ピアノ協奏曲 第1番 第2番  ドレーゲセ ピアノ協奏曲
p: ベッカー M. ザンデルリンク指揮 ベルリン放送交響楽団

レビュー日:2009.8.11
★★★★☆ 19世紀のライプツィヒ楽派の保守的な作品を伝える
 ハイペリオン・レーベルによる知られざるロマン派のピアノ協奏曲を発掘するシリーズの第47弾。今回取り上げられたのは、ドイツの作曲家ザーロモン・ヤーダスゾーン(Salomon Jadassohn 1831-1902)の2曲と、同じくドイツの作曲家、フェリックス・ドレーゲセ(Felix Draeseke 1835-1913)のピアノ協奏曲。ベッカーのピアノ独奏、M. ザンデルリンク指揮ベルリン放送交響楽団の演奏で、2008年の録音。
 ヤーダスゾーンは対位法の大家として少し名を知られている。著書「音楽作曲法」は各国語に翻訳され、教科書として利用されている。ヤーダスゾーン、ドレーゲセともに19世紀のライプツィヒで音楽を研究し、いずれも古典的なスタイルで様々な作品を残した。今日、それらの作品が忘れられているのはユダヤ人だったヤーダスゾーンの場合、ナチス時代に作品が批判されたこと、ドレーゲセは逆に純ドイツ的な作風が過大に認められたことが戦後の評価の低下に繋がったと伝えられる。その両者の作品を通してみると、いずれも保守的で似たような作風であると思える。(つまり政治的な判断というのは、芸術にしろ何にしろ本質的なものを副次的に格下げするものなのである)。
 これらの作品は和声がしっかりしているし、構成も自然であり、音の融和性はすぐに馴染む。さすがに二人とも理論の大家である。ただし、音楽的な魅力という点ではやはり乏しい。音楽の基礎はしっかりしているが、その上に作られているものは常套的過ぎて、面白みに欠けていると感じられても仕方がない。しかし、ヤーダスゾーンの作品は、どことなく流れのある旋律線がメンデルスゾーンを思わせるし、ドレーゲセの作品は部分的に勇壮な力を見せてくれる。演奏も作品に忠実なもので、これらの曲の保守性とロマン性を適度に表出してくれる。歴史の過程で埋もれた作品を知るよい機会を与えてくれるディスクと言える。


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