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イベール



管弦楽曲

交響組曲「寄港地」 フルート協奏曲 モーツァルトへのオマージュ 交響組曲「パリ」 バッカナール ボストニアーナ ルイヴィル協奏曲
デュトワ指揮 モントリオール交響楽団 fl: ハッチンズ

レビュー日:2017.4.25
★★★★★ イベールの魅力を、最高な形で伝えてくれる録音です
 シャルル・デュトワ(Charles Dutoit 1936-)指揮、モントリオール交響楽団によるイベール(Jacques Ibert 1890-1962)の管弦楽曲集。収録曲は以下の通り。
1) 交響組曲「寄港地」(パレルモ-ローマ、チュニス-ネフタ、バレンシア)
2) フルート協奏曲
3) モーツァルトへのオマージュ
4) 交響組曲「パリ」(地下鉄、郊外、パリのイスラム寺院、ブローニュの森のレストラン、旅客船「イル・ド・フランス」、祭りの行列)
5) バッカナール
6) ボストニアーナ
7) ルイヴィル協奏曲
 フルート協奏曲のフルート独奏はティモシー・ハッチンズ(Timothy Hutchins 1954-)。1992年の録音
 イベールの色彩豊かなオーケストレーションを、繊細な音色で仕上げた極上のアルバム。録音から25年がたつが、いまだにこれらの楽曲の代表的録音として、最初に指おられるべきものだと思う。
 イベールは、印象派の流れを継ぎながら、20世紀らしいフランス的機知を音楽に盛った天才だった。そういった点でプーランク(Francis Poulenc 1899-1963)に親近性のある作風であるが、プーランクにあるサティ的な「おふざけ」の要素は少なく、非常にまじめに瀟洒さを描いた作曲家だと思う。
 デュトワのエレガントな音作りは、プーランクも見事だけど、このイベールにも抜群の適性を示す。抜けるような透明な音色、鮮明なサウンド、機知を表現する粋なアクセント、どれをとってもビタリと決まっている。
 個人的に交響組曲「パリ」という作品が大好きだ。地下鉄(メトロ)はパリを象徴する交通機関だろう。その1号線が開通したのはパリ万博のあった1900年。イベールが10歳の時だ。少年イベールにどのような心象を刻んだかはわからないが、その新しい「響き」は、印象的だ。交響組曲「パリ」はイベールがオーケストラの音色を駆使して作り上げた様々な「仕掛け」が施してある。これを周到かつ瞬発力豊かに再現していくモントリオール交響楽団の巧いこと!これ以上の演奏を出来るオーケストラが、果たしてあるかどうか。
 有名な交響組曲「寄港地」は、静寂と喧騒の対比感が一つのポイントだが、デュトワは本当にうまい。静寂を殺すことなく、喧騒も楽しく盛り上がりながらも、「うるささ」とは無縁と言って良い音のスマートさがある。
 フルート協奏曲はハッチンズの麗しくも瑞々しいフルートが魅力たっぷり。透明な光のようなサウンドは、聴き手を酔わせてくれる。バッカナールは演奏によっては単なる大騒ぎに終わってしまうのだけれど、デュトワとモントリオール交響楽団はカラフルな円舞を見せてくれるようなひと時を与えてくれる。
 演奏、そして抜群に明晰な録音が、これらのイベールの楽曲の魅力を、最大限にまで高めていると感じられる。イベールの音楽の美しさ、そして楽しさに触れたい人にとって、当盤は最良の選択となるだろう。


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