ホルスト
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組曲「惑星」 ギブソン指揮 スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 レビュー日:2009.11.9 |
★★★★★ ギブソンによる模範的で充実した「惑星」
アレクサンダー・ギブソン指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団によるホルストの「惑星」。録音は1979年で、シャンドス・レーベルによる初のデジタル録音でもある。ちなみにギブソンはこのあとも同曲を録音しているので、こちらはあえて言うなら「旧盤」に当たる。 ホルストの「惑星」は録音映えする楽曲でもあり、録音技術の進展とともに様々なディスクが出てくるようになった。この曲にはじめて大衆的な注目を傾けさせたのはカラヤン盤だと思うが、現在ではそれに加えてデュトワの透明で都会的な演奏、レヴァインのダイナミックでパワフルな演奏などに人気があるようだ。 ホルストはイギリスの作曲家である。イギリスの作曲家の場合、大陸とはちょっと異なる音楽の嗜好性を持っていたことから、特によく「お国もの」演奏が持て囃される傾向があると思う。私個人的には、(自分にそのような素養が足りないせいかもしれないが)、お国ものでもそうでなくても特に聴き方が違うわけではない。ただ、聴いてみてふいにメロディの扱いがストンと落ちたときなど、「あ、やっぱり地元だからかな」と適当に流すくらいだ。 さて、ホルストの「惑星」の場合、人気が一気にワールドワイドになっただけに事情が異なるようである。このギブソン盤は定義としては「お国もの」なのだろうけれど、そういう色眼鏡で聴くこともなかろう。というのは演奏も非常にスタンダードでいい意味で普通だからである。各曲は音楽的表現として均質化されているし、やり過ぎともいえる踏み外しはない。迫力は存分にあるし、いかにも世界クラスのオーケストラが鳴っているという感じだ。 中でも後半の充実感がよい。「土星」は神秘的なベースを背景に求心力のある演奏で、しまりのある演奏。「天王星」はユーモラスさがほどよく出ていて、シンフォニックな音幅も楽しめる。「海王星」はハープの表情豊かな音色が印象的で、この楽章にこれほど起伏を感じられる演奏も珍しい。ひいては最初から最後まで楽曲を存分に楽しめる演奏であり、同曲の世界標準的演奏といってもいいかもしれない。 |