エルツ
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ピアノ協奏曲 第3番 第4番 第5番 p: シェリー シェリー指揮 タスマニア交響楽団 レビュー日:2006.6.5 |
★★★★☆ アンリ・エルツの作風がわかります。
アンリ・エルツ(Henri Herz 1803-1888)はウィーン生まれのフランス人ピアニスト兼作曲家。いわゆる超絶技巧ピアニスト時代の一翼を担った人物で、ショパン、リスト、ピクシス、チェルニー、タールベルクとともに「ヘクサメロン(ベッリーニの「清教徒」の行進曲による華麗な大変奏曲)」を共同で作曲した一人としても名を見かける。当時はロシア、アメリカでも大々的に演奏旅行を行っている。しかし現代では、作曲家としての彼を知りたいと思っても、機会は少ない。 そんな中でハイペリンによるロマン派の知られざるピアノ協奏曲を発掘するシリーズでその作品が取り上げられたのは興味深い。当シリーズによるエルツのピアノ協奏曲はこれが2枚目で、今回は第3番から第5番までの3曲が収録されている。ハワード・シェリーがピアノと指揮、タスマニア交響楽団の演奏。タスマニア交響楽団はオーストラリア南方の人口50万人程度の島にあるオーケストラであるが、ほとんどがヨーロッパ人により構成されており、そのためかスタンダードで安定したサウンドを繰り広げている。レベルも低くはない。 楽曲は古典的なスタイルで、強い個性はあまりないかもしれないが、思いのほか深刻な響きが多く、環境音楽という雰囲気でもない。特に終楽章が華やぐ傾向が強く、とくに第3番の終楽章は華やかなシンバルを含んだ打楽器のリズムが印象的で、ちょっとしたオペレッタ風のピアノ協奏曲を聴いているという感じがする。 とはいえ作品として強く印象に残るというほどではなく、やはり、このような企画でなければ録音も出てこなかっただろうな、と感じてしまう作品群とも感じられた。 |