グレチャニノフ
![]() |
正教会の受難週間用の聖歌 ブラッフィー指揮 フェニックス・バッハ・クワイヤー カンザス・シティ・コーラル レビュー日:2009.11.9 |
★★★★☆ ギリシア正教会のように古典的で模範的なグレチャニノフの音楽
グレチャニノフの正教会の受難週間用の聖歌集を収録。ブラッフィー指揮フェニックス・バッハ・クワイヤー カンザス・シティ・コーラルの演奏。2004年の録音。 アレクサンドル・グレチャニノフ(Alexander Grechaninov 1864-1956)はモスクワで生まれアメリカで活躍した作曲家。ペテルブルク音楽院ではリムスキー・コルサコフに師事している。いっときパリに暮らしていたが、戦火を避けて1939年からアメリカに拠点を構えた。作曲のスタイルはロシア国民学派をベースに叙情的な色合いを強めたもの。作曲ジャンルは、交響曲、協奏曲、室内楽曲、器楽曲、歌劇、声楽曲と広範で、かつ多作でもあった。現代では演奏機会が多いとは言えない。 中にあって、声楽曲には価値ある作品があり、CDもしばしばリリースされている。当ディスクにはそのうち正教会の受難週間用の聖歌集が収録されている。第50回グラミー賞でクラシック部門の最優秀録音賞を受賞。ちなみに受難週間とは復活祭の前の一週間。 これを聴いてみると、まったく不思議なことに(あるいは不思議でもないのか)作曲年代とか、作曲者の土壌というものがほとんど伝わってこないように思われる。グレチャニノフという名前からはロシア的な作風・・・スラヴの香り漂うロマンティシズムを期待するし、あるいは戦争の時代であったことや祖国を離れた経歴を考えると、ある意味時代の負の側面が影響するのでは?と思ってしまうが。グレチャニノフの作品は古典的でオーソドックス、ひたすら厳かな、まさにロシアの中枢のギリシア正教会の教会音楽である。 最初から独創性など狙っていない、教会音楽としての敬虔さをただスコアにしていったような、きわめて職業的とも言える作曲活動に思える。こういのを聖職というのだろうか?この音楽には時代背景とか作曲者の音楽史上の立ち位置とか、そういう論点は向かないのかもしれない。 |