グレインジャー
モールバラ公爵のファンファーレ コロニアル・ソング イングリッシュ・ダンス シェパーズ・ヘイ 3人の仲間がいた フィッシャーの水夫宿 われら夢見し者たち 収穫の讃歌 楽しい鐘の音 ウォーキング・テューン(吹奏楽版) 「かいつまんでいえば」組曲 緑の茂み ヒコックス指揮 BBCフィルハーモニー管弦楽団 レビュー日:2009.11.9 |
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★★★★☆ シャンドスのグレインジャー・シリーズ第1弾です
オーストラリアのメルボルンで生まれ、イギリスとアメリカで活躍したピアニスト兼作曲家、パーシー・グレインジャー(Percy Aldridge Grainger 1882 - 1961 )の作品をシリーズとして録音リリースしているシャンドス・レーベルの第1弾アルバムがこれ。本盤は「管弦楽曲集・その1」ということになる。収録曲は、モールバラ公爵のファンファーレ、コロニアル・ソング、イングリッシュ・ダンス、シェパーズ・ヘイ、3人の仲間がいた、フィッシャーの水夫宿、われら夢見し者たち、収穫の讃歌、楽しい鐘の音、ウォーキング・テューン(吹奏楽版)、「かいつまんでいえば」組曲、緑の茂み。計12曲。演奏はヒコックス指揮BBCフィル。録音は1996年。 日本ではグレインジャーの名前は、歴史上のピアニストとしていくぶん知られていると思う。しかし、作曲家としてはどうだろう?まずぱっと思いつく曲がないだろう。そんな作曲家の作品を立派な演奏と録音で紹介するのはさすがシャンドスである。同じレーベルでは、例えばバークリー親子の作品のシリーズも面白かった。そちらもヒコックスが指揮していたし、この辺の上手さは折り紙つきだ。 楽曲は、華やかな雰囲気を持ったもので、深刻な諸相を描く部分はほとんどない。かろやかに歌う弦楽合奏、古典的な和音で、あっさりとしたメロディ。また隠し味的に活躍するピアノやオルガンの含まれたサウンド作りが面白い。冒頭の「モールバラ公爵のファンファーレ」はガーシュウィンを思わせる“時代的ファンファーレ”だ。「コロニアル・ソング」の前半部分の叙情性はどこか日本の童謡にも通じるような懐かしさを覚える。その後も華やかな金管に打楽器や木琴が添えられるような楽曲が多く続く。通して聴くと「もうちょっと落ち着きたまえ」と言いたい気もするが、グレインジャーという人の作曲スタイルというのはよくわかる。また管弦楽書法にも通じていて、ピアノの編曲ものばかりに腕を発揮したわけではないのだということも再認識できる。 やや「軽音楽」的で、クラシックとしては決してメジャーなレパートリーではないとも思うが、祭典等の機会音楽の様な雰囲気を十分伝えてくれる。 |
若々しき組曲 岸辺のモリー デリー州の調べ 羊飼いの踊り カントリー・ガーデンズ ある朝早く ストランド街のヘンデル(木靴の踊り) モリスもどき ドリーマリー 戦士たち(想像上のバレエ音楽) ヒコックス指揮 BBCフィルハーモニー管弦楽団 レビュー日:2007.11.27 |
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★★★★☆ グレインジャーの明るい作風がよく出た管弦楽曲集です
シャンドスのグレインジャー・エディションから。当盤は管弦楽曲集の第2集で、収録曲は、1) 若々しき組曲 2) 岸辺のモリー 3) デリー州の調べ 4) 羊飼いの踊り 5) カントリー・ガーデンズ 6) ある朝早く 7) ストランド街のヘンデル(木靴の踊り) 8) モリスもどき 9) ドリーマリー 10) 戦士たち(想像上のバレエ音楽)の10曲。演奏はヒコックス指揮のBBCフィルで、録音は1997年。 パーシー・グレインジャー(Percy Aldridge Grainger 1882-1961)は、オーストラリアで生まれ、若くしてイギリスに渡り、そこで活躍したピアニスト・作曲家である。そんなわけで英レーベル・シャンドスでも録音がシリーズ化された。 管弦楽曲を通して聴いてみての印象だが、その音色や書法は、18歳年上のR.シュトラウスと15歳年下のコルンゴルトの間に位置するようなイメージだ。他のイギリス音楽と比べると、いくらか中央ヨーロッパよりのあかぬけた音色がするし、軽やかさを出すときも、きちんと旋律を保持している。だから音のバランス的にも安定感があり、逆に言うとあまり強く印象に残らないかもしれない。それでももちろん魅力がないわけではなく、美しい部分もある。「若々しい組曲」は瀟洒な曲が続いており、ガーシュウィンを思わせるような音色が楽しめるし、「ドリーマリー」は情緒的な雰囲気豊かな作品。もっとも充実していると考えられる「戦士たち」はピアノを交えたオーケストレーションをなかなか堪能させてくれる豪放な仕上がりだ。全般に陽性な曲が多く、悲しい音色がめったにないというのは、この作曲家の全作品に共通する特徴だと思う。オーケストラもよく鳴り、過不足ない安定した演奏です。 |
前奏曲(2曲) ジーグ アンダンテ・コン・モート ピース サキソン・ツィ・プレイ イングリッシュ・ワルツ 夕暮れに トレイン・ミュージック 船乗りの歌 ウォーキング・チューン 3つのスコットランド民謡 スコットランドのストラススペイとリール 全世界からの7人の男 チャイコフスキーの「花のワルツ」によるパラフレーズ アイルランド、デリー州の調べ ニアー・ウッドストック・タウン ダオメーにて p: スウェイツ レビュー日:2007.11.3 |
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★★★★★ 軽やかで華やかなグレインジャーのピアノピース集
パーシー・グレインジャー(Percy Aldridge Grainger 1882-1961)は、オーストラリア、メルボルン生まれのピアニストで作曲家である。しかし20歳になる前にイギリスに移っており、活躍もイギリスを中心としていたため、今となってはイギリスの音楽家というイメージである。最近ではガーディナーがホルストの「惑星」を録音するさい、グレインジャーの管弦楽曲をカップリングし、日本のフアンにも作品が知れるきっかけとなった。 多様なジャンルに作品をのこしたグレインジャーであるが、当盤はピアノ独奏作品を集めている。小品ばかりであり、一応収録曲をまとめておくと、前奏曲(2曲)、ジーグ、アンダンテ・コン・モート、ピース、サキソン・ツィ・プレイ、イングリッシュ・ワルツ、夕暮れに、トレイン・ミュージック、船乗りの歌、ウォーキング・チューン、3つのスコットランド民謡、スコットランドのストラススペイとリール、全世界からの7人の男、チャイコフスキーの「花のワルツ」によるパラフレーズ、アイルランドのデリー州の調べ、ニアー・ウッドストック・タウン、ダオメーにて、他に初期の数作品。収録時間は79分以上。ピアノはグレインジャーを得意とするペネロピ・スウェイツ。録音は2000年。 いずれも陽性の軽やかな作品で、非常に聴きやすい。また華麗な演奏効果を上げるシーンもあり、なかなか聴き映えのするアルバムに仕上がっている。サロン風というのだろうか、タイトルはちょっとサティっぽいが、リストやアルカンのような「奔放さ」をも含んでいる。また編曲も得意だったようで、チャイコフスキーや有名な民謡の旋律を巧みにアレンジしている。身軽さも身上のようで、ちょっと坂本龍一のピアノ・ピースを思わせるような作品もある。「ダオメーにて」でノリノリにアルバムを結ぶのも良い演出だ。 スウェイツはかなり腕達者なピアニストのようで、その華麗な技術も存分に堪能できる。おそらく他の作曲家の作品を録音しても面白いに違いない。 |