ガーシュウィン
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ガーシュウィン ピアノ協奏曲 ラヴェル ピアノ協奏曲 p: ロジェ ビリー指揮 ウィーン放送交響楽団 レビュー日:2007.10.6 |
★★★★☆ ラヴェルよりガーシュウィンをメインと考えて・・
パスカル・ロジェはかつてデッカから様々な録音をリリースしていたが、最近では様々なレーベルから自由な録音活動を行うようになった。これもデッカではなくOEHMSレーベルからリリースされたもので、録音は2004年。 本盤にはガーシュウィンとラヴェルのピアノ協奏曲が収録されているが、このうちラヴェルについてはデッカレーベルからデュトワ指揮モントリオール交響楽団と1982年に録音したものがあるので、今回の録音が22年ぶりということになる。 演奏であるが、前回の録音でロジェはパステルカラーともいえる透明感のあるクリアな音色で、デュトワの瑞々しい魅力溢れる指揮ぶりと合わせて実に見事な録音だったのに対し、今回はやや抑えた音色でシックな感じになっている。表現も内省的で、細やかな声部や和音の響きを細心にコントロールしようという気概がある。それ自体は悪くないのだが、オーケストラの音色が時として凡庸なところがあり、これは前述のデュトワ盤のオーケストラがあまりにもすばらしかったためそう聴こえてしまう、という不利な面があるのだけれど、そういった中で、とりわけこちらの新盤という理由はちょっと探し難いかもしれない。 だから、むしろこのディスクはガーシュウィンをメインと考えたい。こちらの方が最初に収録されているのもそういう配慮からだろうか。こちらもしっとりとした仕上がりで、シックな色合いであるが、この曲は(私見だけれど)ガーシュウィンの中でももっとも落ち着いた響きが似合う曲だと思うので、この演奏はふさわしい。オーケストラの発色もガーシュウィンだからということで、とりたてて変わったことをしていないのが好ましいと思う。 |
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ガーシュウィン ピアノ協奏曲 3つの前奏曲 コープランド エル・サロン・メヒコ(バーンスタイン編) ピアノ・ブルース 第3番 バーバー バラード p: ヤブロンスキー アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 レビュー日:2008.8.7 |
★★★★★ 色鮮やか!まさに快演!
ペーテル・ヤブロンスキーの個性が発揮された快録音。このピアニストがもともとは才気溢れるジャズ・ドラマーだったことは有名だが、それにしても言ってみれば「副業」のピアノがこれだけ上手いのだから凄い。ガーシュウィンをはじめとするプログラムは、彼の経歴とオーバーラップして見える。もちろん、経歴ゆえに名演が生まれるわけではないし、その逆でもないけれど、これだけ気持ちのいい演奏を連発させると、やっぱりそもそもの感性が卓越していると実感してしまいます。 ガーシュウィンのピアノ協奏曲は、この作曲家の意欲が全面に出た傑作だが、この作品へのアプローチはいろいろある。かつて名盤と言われたプレヴィンのものは思いのほかシックな仕上がりで驚いた。それに比べるとこのヤブロンスキーは録音がいいこともあって快刀乱麻、まさに胸のすく爽快な名演だ。一点として曇った音色はなく、つねに瑞々しい音色で色彩感が横溢する。アシュケナージ指揮のロイヤルフィルによるバックも快演。早くからヤブロンスキーの才を認め、クラシックの世界に引き込んだアシュケナージの喜びが伝わってくるようで最高に楽しい。 他の収録曲はピアノ独奏曲。コープランドの「エル・サロン・メヒコ」はオリジナルの管弦楽曲をバーンスタインがピアノに編曲したものだが、バーンスタインの編曲家としての才もよくわかる。メキシコ民謡の親しみやすい快活なメロディをことさら鮮やかに弾きこなす様は清清しい。 バーバーのバラードはショパンに似た6/8拍子の楽曲で、こちらは丹精な表現を聴くことができる。楽曲も興味深い一品。ガーシュウィンの3つの前奏曲では第2番の郷愁を感じる旋律が印象に残る。 |
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ガーシュウィン 3つの前奏曲 2つの調の即興曲 プロムナード(ピアノ独奏版) バルトーク ピアノ・ソナタ メシアン 「幼な子イエスにそそぐ20の眼差し」から 第13曲「降誕祭」 第19曲「我は眠っているが、私の魂はめざめている」 シルヴェストロフ エレジー ベアフ スペイン風即興曲 p: ヴァウリン レビュー日:2020.12.9 |
★★★★★ ヴァウリンによる近現代ピアノ独奏曲・プログラム
デンマークを中心に活躍するロシアのピアニスト、アレクサンデル・ヴァウリン(Alexander Vaulin 1950-)による近現代のピアノ独奏曲を集めたアルバム。収録曲は以下の通り。 ガーシュウィン(George Gershwin 1898-1937) 3つの前奏曲 1) 第1番 変ロ長調 2) 第2番 嬰ハ短調 3) 第3番 変ホ長調 4) 2つの調の即興曲 5) プロムナード(ピアノ独奏版) イリヤ・ベアフ(Ilja Bergh 1927-2015) スペイン風即興曲 6) Catedral de Palma 7) Scirocco mallorquin 8) Recuerdos シルヴェストロフ(Valentin Silvestrov 1937-) 9) エレジー メシアン(Olivier Messiaen 1908-1992) 幼な子イエスにそそぐ20の眼差し から 10) 第19曲 我は眠っているが、私の魂はめざめている(Je dors, mais mon coeur veille) 11) 第13曲 降誕祭(Noel) バルトーク(Bela Bartok 1881-1945) 12-14) ピアノ・ソナタ BB 88(Sz80) 1998年録音。 ヴァウリンの録音は多くはないが、デンマークのマイナー・レーベルClassicoからリリースされているものがいくつかあって、入手できないこともない。当盤もその一つ。ヴァウリンのロシア・ピアニズムを体現した演奏を堪能することができる。音色の重さ、太さ。かつ情感と動感に満ちた響きは、いかにも骨太なロマンティシズムに満ちていて、素晴らしい。ヴァウリンのようなピアニストの存在については、日本でももっと知られることが相応しいと思う。 ガーシュウィンの「3つの前奏曲」はこの作曲家の代表作の一つで、リズム、音色ともにこの作曲家ならではのものが満ち溢れている。ヴァウリンの思い切った低音の響かせ方かたはじまり、全体が躍動するようなスウィング感は、この音楽に相応しいだろう。第2曲のニュアンスも絶品。プロムナード(ピアノ独奏版)は「walking with dog」のサブタイトルもある。こちらも有名曲だ。日本人が連想する散歩と比べると、かなり活発で、波乱万丈な感じだが、その楽しさは比類ない。休日はこんな感じで過ごしたいものである。 続いて、イリヤ・ベアフの作品がある。ベアフはデンマークのピアニスト兼作曲家である。だが、その作品は少なくとも日本ではほとんど知られておらず、私も当盤ではじめて聴いた。ヴァウリンは活動拠点がデンマークであったから、おそらくベアフと親交があったのだろう。先輩芸術家への敬意を踏まえての選曲だろうか。ベアフの曲は「響きを楽しむ」といった趣向。メロディーやリズムに目立ったものがあるわけではないが、傾聴させていただこう。 シルヴェストロフのエレジーは、いわゆる前衛的なものと抽象性の高い美観が交錯したもの。メシアンの作品で、ミステリアスな雰囲気が盛り上がる。ここらへんで、楽曲によって、微妙にトーンへのアプローチを変える巧妙さが、ヴァウリンにはある。 末尾にバルトークのピアノ・ソナタが収められている。バルトークのピアノ独奏曲は、彼の音楽がもつ野趣性が、ほとんど加工されずにその荒々しい外貌を示すところがあり、この曲にもそんなところがあるが、ヴァウリンは第1楽章にストラヴィンスキー的なテイストを与え、3楽章では、民俗的なリズム処理を鮮やかに施し、立派な聴き応えを感じさせてくれる。 以上のように、ヴァウリンの至芸に触れることの出来る貴重な音源となっている。録音の明瞭性がいま一つなのがもったいないが、全体評価としては、十分に聴き手に満足感を与えてくれるものだと思う。 |