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フィールド



協奏曲

ピアノ協奏曲 第2番 第3番(夜想曲「第2番」付)
fp: シュタイアー スターン指揮 コンチェルト・ケルン

レビュー日:2010.7.14
★★★★☆ 「ノクターン」創始者によるピアノ協奏曲
 ジョン・フィールド(John Field 1782-1837)はアイルランドのピアニスト兼作曲家。クレメンティに師事し、後年ロシアのペテルブルクに定住しピアノ教師としても活躍した。作品としては20曲にのぼるノクターンが圧倒的に有名で、ショパンへのルーツとされている。他にも7つの協奏曲、4つのソナタなどを遺していて、ここにはピアノ協奏曲の第2番と第3番が収録されている。フォルテ・ピアノ独奏はアンドレアス・シュタイアー、スターン指揮コンチェルト・ケルンの演奏で、録音は1998年。
 モーツァルトの協奏曲は弾き振りで録音したシュタイアーだが、ここでは指揮をスターンに委ねた。それだけ作品の浪漫性が増し、オーケストラのあり様が多様になったということだろう。(ただし、シュタイアーが弾き振りで録音したモーツァルトの協奏曲は19番以前の初期のものである)
 古典的であるとともにロマンティシズムを感じさせてくれる作品だ。ピアノの縦横な立ち回りはショパンの協奏曲を思わせるが、オーケストラの編成も立派で充実した音楽を呼応する。第2番は規模の大きな音楽で、様々なニュアンスを引き出している。ただ、主題自体の魅力はもう一つのところがあり、発展も単調なところがあるので、長い第1楽章は「長過ぎる」と感じられてしまうだろう。
 第3番の第2楽章にあてられているのが、夜想曲第2番ハ短調である。これは引用ではなく、そのまま用いている。必然的にこの楽章はオーケストラが登場せず、4分以内のピアノ・ソロで終わってしまう。しかし、さすがはノクターンの創始者だけあって、この音楽は美しく、何度も繰り返し再生したくなる。協奏曲のアルバムなのに、白眉がソロの楽章となってしまうのだが・・・。両曲とも終楽章は楽天的で典雅な雰囲気。これも時代を示唆しているだろう。フォルテ・ピアノという楽器のため、音は強くなく、時として歯がゆい感じもするが、特有の雰囲気を醸し出しているところもある。音が伸びないので、乾いた印象になり、ある程度テンポ設定の幅も決まってくる。その拘束による律動的な音楽が良いかどうかは微妙と思う。


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器楽曲

The art of the nocturn
p: オールト

レビュー日:2008.2.11
★★★★★ いくつもテーマのあるアルバムです
 タイトルはずばり「夜想曲」。4枚組の1枚目は「夜想曲の創始者」と考えられるフィールドの夜想曲が15曲収録されている。2~3枚目はショパンの21曲。そして特典盤にあたる4枚目のCDには総勢9名の作曲家の15曲の夜想曲が収録されている。~<プレイエル(Camille Pleyel 1788-1855)、カルクブレンナー(Frederic Kalkbrenner 1785-1849)2曲、クララ・シューマン(Clara Schumann 1819-1896)、ルフェビュル=ウェリ(Louis Lefebure-Wely 1817-1870)、エドモンド・ウェーバー(Edmond Weber)、アルカン(Charles-Valentin Alkan 1813-1888)2曲、グリンカ(Mikhail Glinka 1804-1857)、マリア・シマノフスカ(Maria Szymanowska 1789-1831)、ドブジニスキ(Ignacy Feliks Dobrzynski 1807-1867)5曲>
 カミーユ・プレイエルはパリでピアノ製造会社を創設したイグナーツ・プレイエル(Ignaz Pleyel 1751-1831)の長男。カルクブレンナーはフランス生まれのピアニスト兼作曲家。1824年からパリ・プレイエル社の役員となっている。ショパンの師の一人としても有名。クララは言わずと知れたロベルトの妻で、ピアニスト。ルフェビュル=ウェリはパリのサン・ロック教会でオルガニストを務めた人物。E.ウェーバーについては生没年も含めて不明。マリア・シマノフスカヤはフィールドに師事した女流ピアニスト。ドジニフスキはショパンとともに勉強したピアニスト。1枚目のフィールドには1823年製のBroadwoodを、次いでショパンの前半では1842年製のPleyelを、そしてショパンの後半と4枚目のオムニバス集では1837年製のEmardを用いて演奏している。
 ピアニストはバルト・ファン・オールト(Bart van Oort)。オランダのフォルテピアノ奏者で、1986年にはベルギーのブルージュで開催されたモーツァルト・フォルテピアノ・コンクールで、聴衆特別賞を受賞。録音は2003年。
 ショパンがより好んだというプレイエルの方が音が広がっていく感じがある。非常に耳ざわりがソフト。エラールの方は特に高音域で、ときとして(現代のスタインウェイなどとくらべると)出力不足の感じもあるが、それが妙に渋い味わいを出す。オールトの演奏はそのへんのツボをさすがに心得ている。またときおり装飾音を自在に操る。聴きなれたショパンの夜想曲の第2番も「おやおや」と楽しませてくれる。カルクブレンナーの曲は音階がどことなくエスニックな感じ。ドブジニスキはメンデルスゾーンの無言歌っぽい。でもどれも、なるほど夜想曲だな、と思わせる。いろんな角度の興味に応えてくれるアルバムだ。


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