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デュカス



交響曲

交響曲 「ラ・ペリ」へのファンファーレ バレエ音楽「ラ・ペリ」 交響的バラード「魔術師の弟子」
フルネ指揮 オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団

レビュー日:2005.5.4
★★★★★ 壮麗・豪華な異国趣味の傑作オーケストラ作品
 1865年フランス生まれの作曲家ポール・デュカスの作品は、しかし本人の厳しい自己批判により大部分が破棄され、現代聴けるものは限られているが、この廉価CDはその魅力を余すことなく伝えた素晴らしいもの。
 彼の作風はドイツの音楽本流(特にベートーヴェン)に多大な影響を受けている。そしてその理論的な音楽構築力はドビュッシーも高く評価している。ここではハ長調の交響曲が力強い展開力を秘め、フランク作品に匹敵する「荘重派フランス交響曲」の一角と感じさせる。全オーケストラが見事に鳴るオーケストレーションには圧倒される。
 代表作といえるバレエ音楽「ペリ」が収録されている。この豪華なサウンドはドイツ・フランスサウンドが見事に昇華して一点に集積されたように感じられる。また音色駆使の巧みさは、ワーグナー、バラキレフ、リムスキー・コルサコフといった作曲家の作風といえる「対象感による引き立たせ」をデュカスの感覚により高度に再構築したことによると思われる。
 有名な「魔術師の弟子」ももちろん素晴らしい作品だ。フルネの一流の棒さばきで、見事な色彩感に仕上がっている。


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器楽曲

デュカス ピアノ・ソナタ   ドゥコー 月の光
p: アムラン

レビュー日:2006.7.24
★★★★★ アムランによるデュカスとドゥコー。
 次々と意表を突くレパートリーを開拓するアムランであるが今回も驚いた。なんとポール・デュカス(Paul Dukas 1865-1935)とアベル・ドゥコー(Abel Decaux 1869-1943)のカップリングである。同時期のフランスの作曲家同士ということになる。
 ドゥコーはフランス印象派の影響を受けながらも新ウィーン楽派的な無調性音楽の作風を探った人物。デュカスほどの知名度はないが、このアルバムはそれを知るいい機会を提供してくれる。
 デュカスのピアノ・ソナタは大曲だ。演奏時間は45分にも及ぶ。4つの楽章がそれぞれ大きな規模を持っている。
 アムランのピアノ・・・正直、今回の録音でちょっとイメージが変わった。いままではあくなき「指回りの探求者」という感じだったが、なんとも潤いのあるアプローチで、曲想にすぅっと沈み込んでいく。聴いてみるとデュカスのピアノ・ソナタはたしかに熟考の末の作品だろう。印象派的な細やかな音色で、ゆらめく影のような不安な楽想をいろいろと試しながら進んでいく。時としてその過程は散漫で、無方向的だが、アムランのピアノはそれをしっかりと導く役割をしめしている。
 ドゥコーの作品「月の光」は作曲に7年以上を費やした、これまた「熟考の作」だが、非常にソノリティに工夫があり、面白い。和音の連続はちょっとドビュッシーの「沈める寺院」を思い起こさせる。これら2曲に新たにスポットを当てた当盤登場の意義は大きい。

デュカス ピアノ・ソナタ   ドビュッシー ベルガマスク組曲
p: ヴァウリン

レビュー日:2020.8.17
★★★★★ デュカスの名作「ピアノ・ソナタ」の暗黒面を描きあげた名演
 デンマークを中心に活動しているロシアのピアニスト、アレクサンデル・ヴァウリン(Alexander Vaulin 1950-)による下記の作品を収録したアルバム。
1) ドビュッシー(Claude Debussy 1862-1918) ベルガマスク組曲(前奏曲 メヌエット 月の光 パスピエ)
2) デュカス(Paul Dukas 1865-1935) ピアノ・ソナタ 変ホ短調
 1999年の録音。
 「ヴァウリン」というピアニストの名も、「デュカスのピアノ・ソナタ」という作品も、あまり知られているとは言えないだろう。だから、このアルバムを聴けば、その双方の素晴らしさを併せて知ることが出来る。これは、そんなアイテムだ。
 デュカスという作曲家は、おそらく、代表作である交響詩「魔術師の弟子」以外で、その名を見ることは稀であろう。しかし、1899年に彼が書きあげた演奏時間45分を要するピアノ・ソナタは、フランス音楽史にその名を刻むべき傑作で、この楽曲には、ドビュッシーも賛辞を惜しまなかったと伝えられる。なお、当録音は、このピアノ・ソナタが書きあげられてから、ちょうど100年後の録音ということになる。
 デュカスのピアノ・ソナタは名品だと思うが、その録音は多くはない。ジャン・ユボー(Jean Hubeau 1917-1992)やマルカンドレ・アムラン(Marc-Andre Hamelin 1961-)の優れた録音があり、決して不毛を感じさせるわけではないのだが、いずれにしても多いとは言えない。
 そこで、是非とも広く聴いて頂きたいのが、当ヴァウリン盤である。この曲には、印象派的なもののほか、暗黒的なところや激烈なものが含まれているのだが、ヴァウリンは、力強く大地に根差すような打鍵を用いて、その暗がりを壮麗に描きあげており、感動的だ。第1楽章では浮遊感のある主題が、手練を尽くした展開で厚く盛り上がり、第2楽章では耽美な歌が沈鬱さを伴って描かれる。第3楽章で憤怒の感情を表現したようなさく裂を得て、第4楽章では壮大な音の絵巻が綴られる。この名品に相応しい重々しさとともに、ピアニスティックな冴えや色彩感にも不足がない。内面的世界を描く表現力が求められるデュカスのピアノ・ソナタに相応しい名演だ。個人的には、ユボー盤やアムラン盤以上に、この作品を描き切った演奏だと感じる。
 ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」も、古典的なロシア・ピアニズムの力強さと、モダンな情緒表現の双方を満たした立派な演奏。特に力強い運動美に溢れたメヌエットが素晴らしい。


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