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ディーペンブロック



管弦楽曲

序曲「鳥」 演奏会用組曲「マルシュアス」 ヴァイオリンと管弦楽のための「賛歌」 交響組曲「エレクトラ」 「夜への賛歌」第2番 夜 賛歌 大いなる沈黙の中で
フォンク指揮 ハーグ・デジデンティ管弦楽団 Ms: フィニー T: ホンベルト Br: ホル

レビュー日:2008.2.9
★★★★★ オランダを代表する作曲家ディーペンブロックの作品集
 「オランダの作曲家」というと意外に思いつく人物がいないのだが、おそらく中でアルフォンス・ディーペンブロック(Alphons Doppelbock 1862-1921)あたりがもっとも重要な人物となると思う。とはいえオランダ国外の知名度はいまいちで、その主要な作品が一気に聴けてしまうこの2枚組のアルバムは廉価ということもあり価値が高い。1枚目に管弦楽曲、2枚目に管弦楽伴奏つきの歌曲(「交響的歌曲」と称される)が収録されている。
 収録曲は、(1)序曲「鳥」 (2)演奏会用組曲「マルシュアス」 (3)ヴァイオリンと管弦楽のための「賛歌」 (4)交響組曲「エレクトラ」 (5)「夜への賛歌」第2番 (6)夜 (7)賛歌 (8)大いなる沈黙の中で。(5)と(6)でメゾソプラノ独唱がリンダ・フィニー、(7)でテノール独唱がクリストフ・ホンベルト、(8)でバリトン独唱がロベルト・ホル。フォンク指揮 ハーグ・デジデンティ管弦楽団の演奏。録音は89年から90年にかけて。
 ディーペンブロックはもともと文学者であったが、独学で作曲を学んだ変り種。作品はなかなか魅力的だ。独特の和声の使い方で、メロディやモチーフの変容が継続し、印象としては句読点の「句点」がなく読点だけで続くような不思議な音楽だ。歌曲でも管弦楽の比重が大きく、管弦楽曲の色彩が強い。マーラーやリヒャルト・シュトラウスの影響はもちろんあるが、ドビュッシーやワーグナーの色も含んでいる。代表作と考えられる「大いなる沈黙の中で」はニーチェの原詩によるが、壮大な5部構成からなり、ゆったりとした流れの中で様々に情熱を宿しては発散する過程が見事。「夜への賛歌」第2番も神秘的なまどろみを宿した夜の雰囲気が全編に満ちている。管弦楽曲はいずれも豊かな情感を湛えているし、演奏は響きが美しく統一されている。このような廉価版で一通り聴けるのは実にありがたい。


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