クルーセル
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クラリネット協奏曲 第1番 第2番 第3番 cl: ライスター ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団 レビュー日:2026.5.18 |
| ★★★★★ クルーセルのクラリネット協奏曲の名曲性を伝え続ける名録音
カール・ライスター(Karl Leister 1937-)のクラリネット独奏、オスモ・ヴァンスカ(Osmo Vanska、1953-)指揮、ラハティ交響楽団の演奏によるフィンランド古典を代表する作曲家、ベルンハルト・クルーセル(Bernhard Crusell 1775-1838)の下記の3つのクラリネット協奏曲を録音したアルバム。 1) クラリネット協奏曲 第2番 ヘ短調 op.5 2) クラリネット協奏曲 第1番 変ホ長調 op.1 3) クラリネット協奏曲 第3番 変ロ長調 op.11 1986年の録音。 これらの3つのクラリネット協奏曲は、モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-1791)やウェーバー(Carl Maria von Weber 1786-1826)の作品と並び、当該ジャンルの代表曲として知られる。クルーセル自身がクラリネットの名手であったことから、これらの作品においては、クラリネットの音域をフルに活かした高い技巧が要求されるだけでなく、抒情的な旋律性を歌わせる表現力が求められる。 当盤では、22歳の若さでベルリンフィル・ハーモニー管弦楽団の首席奏者となったライスターが、均整のとれた響きで、巧妙に楽曲の魅力を伝えた名演が展開されている。 最初に「第2番」を収録する構成をであるが、3作品中唯一単調で、劇的な性格をたたえたこの楽曲は、クルーセルの代表作と呼ぶに相応しいものに違いない。この作品は「グランド・コンチェルト」と呼ばれることもある。物悲しくも疾走感のある主題が、輝かしいオーケストレーションをともなって、ドラマチックに音楽の諸相を描いていく過程は、後のメンデルスゾーン(Felix Mendelssohn 1809-1847)の作風を彷彿とさせる。 神童メンデルゾーンは、クルーセルと会う機会があった。クルーセルの協奏曲第2番が初演されたのは1815年のことだが、1822年、ヨーロッパを演奏旅行していたクルーセルは、ベルリンでメンデルスゾーンの邸宅で開かれた家庭コンサートに招待されている。そこで、クルーセルはすでに数々の作品を書いていた13歳の神童メンデルスゾーンと会い、その規格外の才能に深く感銘を受けたことを日記に記している。クルーセルとメンデルスゾーンは、ともにウェーバーやシュポーア(Louis Spohr 1784-1859)といった作曲家から影響を受けていた。このクラリネット協奏曲第2番は、そのような音楽文化の歴史における里程標の一つとしても、存在感のある作品だと思う。 この第2番で、ヴァンスカが指揮するラハティ交響楽団の特徴は鮮明で、明晰で引き締まったサウンドは、北欧風と形容したい高らかな音場を形成する。ライスターの高貴なクラリネットがそこにピタリと嵌る心地よさに満ちている。弦楽器の素晴らしい合奏音と、ティンパニの力強い呼応も見事だ。田園的な第2楽章、情熱的な第3楽章も魅力いっぱいの表現で、ライスターのなめらかなクラリネットは、常に麗しい。 第1番は、モーツァルト的な古典的作風。この楽曲では、ライスターとヴァンスカによって、古典的な作風に相応しい端正な響きが丁寧に描き出されている。終楽章の明るいオーケストラのサウンドと技巧的な独奏クラリネットのやりとりは、音楽的遊行の楽しさを素直に瑞々しく表現したものだ。 第3番は、作品番号は11となっているが、近年の研究では、3作品の中で最初に書かれた作品とされている。独奏クラリネットにオペラのアリアを思わせる役割を与えたり、第3楽章にポロネーズのリズムを引用したりしている。ここでもライスターの流れの良いレガートが極上と言ってよい美観を引き出しており、オーケストラの透き通った響きと抜群の相性を見せている。 クルーセルの3つのクラリネット協奏曲の芸術作品としての価値をあらためて知らしめる名録音である。録音から40年が経過した現在でも、色褪せない質の高い録音も立派であるし、これらの3作品の録音として、普遍的な価値を持つ名盤と言える。 |
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