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バークリー



現代音楽

M. バークリー ホルン協奏曲(1994年改訂版) 弦楽のためのコロナック  L. バークリー 交響曲 第1番 セレナード
ヒコックス指揮 BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団 hrn: パイアット

レビュー日:2007.10.6
★★★★☆ イギリスの親子作曲家、バークリー親子の作品を納めたディスクです
 シャンドスレーベルによる「バークリー・エディション」シリーズの1枚目となったのが当ディスク。演奏はヒコックス指揮BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団。ホルンはパイアット、録音は2001年。当シリーズの特徴はそれぞれのディスクに父レノックス・バークリー(Sir Lennox Berkeley 1903 - 1989 )と息子マイケル・バークリー( Michael Berkeley 1948 - )の双方の作品を収録している点にある。当ディスクのジャケットには親子でピアノを弾いている写真が用いられている。
 収録曲は、順番にレノックスの「交響曲第1番」、マイケルの「ホルンと弦楽オーケストラのための協奏曲」、レノックスの「弦楽合奏のためのセレナード」、マイケルの「弦楽合奏のためのコロナック」と互い違いに収録されている。
 父レノックスはナディア・ブーランジェに師事しており、比較的古典的で堅実な手法を用いている。交響曲は主題や動機の処理においても、一般的な同時代のイギリスの作曲家より、理論的な背景を大事にしており、オーソドックスな赴きだ。一方でジャズの要素も含んでいる。4つの楽章からなる弦楽合奏のためのセレナーデは代表作として知られるもの。簡素な作りながら瀟洒でチャーミングな旋律の扱いに作曲者の心意気が見える。終楽章はやや暗い色合いとなる。総じて古典的作風と言えるだろう。
 息子マイケルは現在のイギリスを代表する作曲家の一人。ホルン協奏曲は2楽章からなるが、いかにも近現代的な不安や抗いがたいものに対する何かを感じさせる作品だと思う。「弦楽合奏のためのコロナック」が収録されているので、親子の弦楽合奏のための作品を聴き比べすることができるわけだが、マイケルの作品はやはりヴァスクスやショスタコーヴィチにも繋がるある種の陰鬱さを秘めていて、父の作品とはずいぶん赴きが異なる。

M. バークリー オルガンと管弦楽のための協奏曲 ヴィオラ協奏曲  L. バークリー 交響曲 第2番 管弦楽のための「夜の声」
ヒコックス指揮 BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団 org: トロッター va: シルヴァーソーン

レビュー日:2006.10.21
★★★★☆ 近現代のイギリスの親子作曲家の作品をまとめて・・
 マイケル・バークリー(Michael Berkeley 1948-)とレノックス・バークリー(Sir Lennox Berkeley 1903-1989)というイギリスの作曲家親子の作品を一枚に集めたもの。シャンドス・レーベルによるバークリー・エディションシリーズの4枚目が当盤にあたる。録音は2003年に行われている。
 父のレノックスはフランスでナディア・ブーランジェに師事していたこともあって、作風は堅実で保守的だ。交響曲は全部で4曲作っているが、どれも聴く機会はほとんどないだろう。バックスの音楽をさらに散漫にしたようでありながら、和音は古典的である。華やぐ部分は断片的で、モチーフの交錯によって音楽は作られている。ティンパニと金管楽器の掛け合いがなかなか楽しいが、くっきりとした聴き栄えがあるわけではなく、やや難渋な作風に思える。
 息子マイケルの作風ははるかに現代的で、精緻なシャープさを持っている。冒頭に収録されたおよそ20分ほどの作品である「オルガンと管弦楽のための協奏曲」がこのアルバムのいちばんの「聴きモノ」と言えそうだ。沈滞と静寂から蘇るように湧き上がる雰囲気がなかなかしゃれているし、打楽器陣とオルガンが派手なクライマックスを作ってくれる。これは結構楽しめる作品だ。それにしても、いつもながら、このような作曲家と作品に焦点を当ててくれるシャンドスのスタッフには頭が下がる。


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