トップへ戻る

バラキレフ



協奏曲

バラキレフ ピアノ協奏曲 第1番 第2番  R.コルサコフ ピアノ協奏曲
p: ビンズ ジョーンズ指揮 イングリッシュ・ノーザン・フィルハーモニア

レビュー日:2004.2.14
★★★☆☆ ロシアロマン派のピアノ協奏曲
 ロマン派ピアノ・コンチェルトの隠れた名作を発掘するハイペリオン・シリーズの5枚目。
 収録曲はバラキレフのピアノ協奏曲(第1番&第2番)とR.コルサコフのピアノ協奏曲。小曲「イスラメイ」などによって名が知られるバラキレフはペテルスブルク生まれ。グリンカの死後、キュイ、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ、ボロディンとともに国民学派の五人組「力強い仲間」を結成している。その功績はきわめて大きいものであった。ピアノ協奏曲はリスト的色彩をも感じさせる。


このページの先頭へ


器楽曲

バラキレフ ピアノ・ソナタ 第2番  チャイコフスキー 同一主題による6つの小品  チャプリギン 小さなキプロスの音楽  クルバトフ ピアノのための7つの小品「闇の中で」
p: ホロデンコ

レビュー日:2020.1.9
★★★★☆ 作品の魅力を卓越した手腕で紹介してくれます
 2013年のヴァン・クライバーン国際コンクールで優勝したウクライナのピアニスト、ヴァディム・ホロデンコ(Vadym Kholodenko 1896-)による、一風変わったプログラムによるアルバム。収録された楽曲は以下の通り。
1) バラキレフ(Mily Balakirev 1837-1910) ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調
2) チャイコフスキー(Pyotr Tchaikovsky 1840-1893) 同一主題による6つの小品 op.21
3) チャプリギン(Evgeny Chaplygin 1943-) 小さなキプロスの音楽 op.37
4) クルバトフ(Alexey Kurbatov 1983-) ピアノのための7つの小品 「暗闇の中で失われたもの」 op.34
 2014年の作品。
 バラキレフ、チャイコフスキーに関しては、収録されている楽曲にあまり録音がなく珍しいものと言えるが、加えて、チャプリギン、クルバトフといった現代の作曲家の作品は、尚の事聴く機会のないものだろう。
 だが、ホロデンコの優れた感覚は、これらの楽曲を魅力的に伝えてくれる。
 バラキレフのピアノ・ソナタ第2番は、バラキレフの小品と同様な瀟洒な響きが印象的な作品で、技巧的で華やかなフレーズがあり、なかなか楽しい。ホロデンコの演奏は、カンタービレがよく利いていて、旋律がとても有機的に響く。音色は、ベースとして暖かさを感じさせるものであるが、色使いを感じさせる弾き分けがあり、それがバラキレフのロマンティックな曲想とよく呼応して美しいものとなる。楽曲には、華やかなリズムを意識させる部分が多いが、ホロデンコの演奏は躍動感が豊かで、この曲を我が物としたという手ごたえに満ちている。終楽章の豊かさも特筆される。
 チャイコフスキーの「同一主題による6つの小品」は、この作曲家が作品番号を与えたものの中で、特に地味な存在に分類されるが、ホロデンコの演奏を聴くと、なかなかいい曲じゃないか、と思わされる。スケルツォではバラキレフでも楽しかった躍動感があるし、葬送行進曲におけるメランコリックな節回しも、堂に入ったものだろう。
 チャプリギンの作品は、思わせぶりなタイトルであるが、特に民俗音楽を題材としたような雰囲気ではなく、渇いたユーモアや暗めの情感が描かれている。クルバトフの作品は2013年に書かれたものとあるが、保守的なミニマル・ミュージックのスタイルであり、聴き易く、様々なクラシック作品の影響を感じさせる。第6曲の和音の音色にドビュッシーを感じる人は多いのでは?・・また、ブラームスやシューマンを思わせる音使いもある。ホロデンコは、これらの作品が持つ叙情性を大切にしながら、音色的な個性を明瞭に演奏していて、これらの楽曲がどのような性格を持っているか、分かりやすくて、かつ楽しめる。


このページの先頭へ