アッテルベリ
交響曲 第3番「西海岸の風景」 第6番 ラシライネン指揮 北ドイツ放送ハノーヴァー・フィルハーモニック レビュー日:2007.10.6 |
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★★★★☆ アッテルベリの代表的な交響曲2曲を収録
クット・アッテルベリ(Kurt Magnus Atterberg 1887-1974)は、スウェーデンの作曲家。本業は別にあったようだが、作曲家としても9曲の交響曲をはじめ、多くの作品を遺している。同い年の作曲家としてはヴィラ=ロボスがおり、ベルクよりやや年下、プロコフィエフよりやや年上といった世代。ここでは交響曲第3番「西海岸の光景」と第6番が収録されている。演奏はラシライネン指揮の北ドイツ放送ハノーヴァー・フィル。99年の録音。第3番はライヴ録音。 アッテルベリの作品の中でも馴染みやすい2曲だと思う。まず「西海岸」とはスウェーデンの西海岸のことである。スウェーデンの場合西海岸より東海岸の方が圧倒的に長大であるが、ここで「西海岸」はデンマーク側の海岸を指す。イエテボリ近くの島で作曲されたという。「太陽の霞」、「嵐」、「夏の夜」と題された3つの楽章からなり、海をテーマにした標題性はドビュッシーの「海」に似通う。全編に北欧的な自然描写感があり、情熱も血がたぎるというより荒れる風といった感じ。第1楽章は物憂げな繰り返し音型から音楽の世界に入るが、ときとして行き場を探すような不思議さがある。2楽章は急な要素が多く、荒れる北の海を容易に連想させてくれる。 第6番は「シューベルト没後100年作曲コンクール」の優勝作品で、トスカニーニも取り上げたもの。1928年の作品だが非常に古典的な構成感であり、アプローチ法も教科書的だ。終楽章はマーチ風の楽曲で、盛り上がりが大きく、前2楽章より個性を感じるし、親しみやすい個所だと思う。いずれにしても古典的北欧的スタイルでけっこう広く聴かれている作品だと思う。(実際録音数もけっこうある)。ラシライネンの演奏は堅実だがオーケストラの力量からややバランスの難しい響きが残っており、荒削りな印象を残すが、それでもこの2曲をまとめてアッテルベリ作品の入口とするにはお手ごろなディスクでしょう。 |