オルウィン
![]() |
交響曲 第5番「壷葬論」 弦楽のためのシンフォニエッタ ピアノ協奏曲 第2番 ヒコックス指揮 ロンドン交響楽団 p: シェリー レビュー日:2007.8.31 |
★★★★★ オルウィンの作曲家としての本領が伝わります
ウィリアム・オルウィン( William Alwyn 1905 - 1985 )はイギリスの作曲家でフルート奏者。1943年に戦争記録映画「砂漠の勝利 The Desert Victory」の映画音楽を手がけて以来、そのジャンルで活躍する。代表的なものとしては1946年の「邪魔者は殺せ Odd Man Out」が有名。ここでは純器楽のための興味深い以下の3曲が収録されている。1) 交響曲第5番「壷葬論(Urn Burial or Hydriotaphia)」 2) 弦楽のためのシンフォニエッタ 3) ピアノ協奏曲第2番 演奏はヒコックス指揮のロンドン交響楽団。ピアノ独奏はシェリー。録音は1993年。 「壷葬論」は「コソウロン」と読み、17世紀の医師、トマス・ブラウンの著作。単に“ハイドリオタフヒア”とも呼ばれる。埋葬における心理メカニズムに知的な考察を加えた作品である。それにインスパイアされた作品が第5交響曲。短い作品だが、急-緩-急-緩の構成を持ち、劇的でシンフォニックな効果に溢れた傑作だと思う。特に冒頭の弦のざわめきからたちまち音楽が立ち上がってくる効果は見事。 弦楽のためのシンフォニエッタも傑作だと思う。4楽章構成の緻密な作品であるが、深刻な陰鬱さや退廃的な美が感じられる。第2楽章のたおやかさはシベリウスの「トゥオネラの白鳥」を彷彿とさせ、第4楽章の深い耽美性はマーラーの晩年の交響曲へのオマージュのように深く響く。 ピアノ協奏曲第2番は前2曲と比べるとそれほど強い個性を感じないが、プロコフィエフに近い音響効果があり、決してハードルの高い作品群ではなく、映画音楽家の作品らしい近づきやすさがある。この作曲家を知るのにもとてもいいアルバムだ。 |