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アルベニス



器楽曲

組曲イベリア~第1巻 第2巻 第3巻 第4巻 ラ・ベガ(草原) イヴォンヌの訪問 スペイン(想い出草) ナバーラ
p: アムラン

レビュー日:2005.5.7
★★★★★ 組曲「イベリア」のたいへん雰囲気ある録音
 アルベニスの組曲「イベリア」全曲に加え、「ラ・ベガ(草原)」「イヴォンヌの訪問」「スペイン(想い出草)」「ナバーラ」が収録されている。ピアノはウデ達者なアムラン。
 イサーク・アルベニス(Isaac Albeniz 1869-1909)の代表作である組曲イベリアはそれぞれ3曲から鳴る全4巻、合計12曲からなる作品であり、ダンディ、フォーレ、ショーソン、デュカスの作風に加え、印象派的な音色を含む作品。中でも第4巻は傑作の呼び声が高い。ドビュッシーのピアノ曲に勝らずとも劣らない素晴らしい魅惑的曲集となっている。
 全12曲にはそれぞれ副題が付いていて、それぞれエヴォカシオン、港(エル・プエルト) セビリヤの聖体祭、ロンデーニャ、アルメリア、トゥリアーナ、エル・アルバイシン、エル・ポーロ、ラヴァピエス、マラガ ヘレス エリターニャ、となる。傑作の誉高い最後の3曲だけでなく、全篇に美しい民俗的な旋律と洗練されたピアニスティックな技法が織り交ざっており、例えば雨の日の休日なんかに聴けば、とても雰囲気が出るのではないか。「港」のようチャーミングな曲も持って来いだ。
 アムランの演奏もさすがに冴えており、細部までことごとく微細な音色を汲み尽くしている。他にもあまり有名ではない後期のピアノ独奏作品が収録されているのもうれしい。

組曲イベリア~第1巻 第2巻 第3巻 第4巻
p: ムラロ

レビュー日:2019.7.25
★★★★★ リズムと音色の妙により、明るい素描性を体感させてくれるムラロの「イベリア」
 フランスのピアニスト、ロジェ・ムラロ(Roger Muraro 1959-)によるアルベニス(Isaac Albeniz 1860-1909)の組曲「イベリア」全4巻を収録したアルバム。収録内容の詳細は、以下の通り。
組曲「イベリア」 第1巻
 1) エボカシオン(招魂)
 2) 港
 3) セビーリャの聖体祭
組曲「イベリア」 第2巻
 4) ロンデーニャ
 5) アルメリーア
 6) トゥリアーナ
組曲「イベリア」 第3巻
 7) エル・アルバイシン
 8) エル・ポロ
 9) ラバピエス
組曲「イベリア」 第4巻
 10) マラガ
 11) ヘレス
 12) エリターニャ
 1996年の録音。
 名作、組曲「イベリア」の全4巻が1枚のCDに収録されている。
 ムラロは、メシアン(Olivier Messiaen 1908-1992)演奏の大家として知られるが、ロマン派や印象派の作品にも良い適性を持っており、この「イベリア」もなかなか魅力的な演奏となっている。冒頭の「エボカシオン」から、浅めのペダリングではあるが、光沢のある音色を繰り出し、いかにもラテン的な肌合いの響きを導いている。2曲目の「港」では、闊達なリズム感に呼応するように、弾力のある旋律が奏でられ、陽の光を浴びているように明度の高い色彩感が感じされ、この作品らしさを感じさせる。
 第1巻も良いと感じたが、第3巻はさらに魅力的で、ところによっては、ギターのつま弾きを連想させるような音色を使い分け、楽曲の起伏を鮮やかに演出する。生き生きとした光彩とリズムが交錯する様は実に楽しい。
 他方で、このムラロの演奏における発色性が過度に感じられる向きもあるかもしれない。アクセントの強調は、しばしば聴き味から「なめらかさ」の要素を奪い、時にゴツゴツした印象になる。個人的に、そういった点で、これらの曲集でより高貴な完成度を感じさせたものとして、アムラン(Marc-Andre Hamelin 1961-)による2004年録音のアルバムがあるので、比べてみるのも一興かと思う。
 さて、投稿日現在、関連サイトでは、ムラロが「エボカシオン(招魂)」について、リスト(Franz Liszt 1811-1886)の「詩的で宗教的なしらべ」の第1曲「喚起(Evocacion)」との間に、原題及びニュアンスの類似性を指摘しているという記事があった。これは私も指摘されてなるほどと思ったところであり、こちらについても、楽曲を比較しながら聴くことは、知的刺激があって、楽しいことであった。


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